『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』

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 皆さん、こんにちは女住人Mです。夏休みも終わり、単館系、公開劇場が少ない系の良作映画が続々とシネマイクスピアリで公開されています。今回は都内では既に大ヒット上映中、お客様からのリクエストも多かった『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』(9/9(土)2週間限定上映)をご紹介します。
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 タイトルからわかる通り、本作はバレエダンサー、セルゲイ・ポルーニンのドキュメンタリー映画。端正な容姿と類まれなる表現力で世界中のバレエファンを魅了し、英国ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルになるも、2年後の人気絶頂時に電撃退団・・・。そんな彼のこれまでの人生を余すこと映しだし、その素顔に迫ります。
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 バレエ界きっての異端児として今も注目を浴びている彼。最近ポルーニンの来日公演詐欺という残念な事件も起こりましたが、裏を返せば人気の証とも言えましょう。でも私自身、この映画が公開されるまでポルーニンの存在を全く知らなかった・・・。彼はグラミー賞にもノミネートされたホージアのヒット曲「Take me to church」を使い踊ったMVがYou Yubeで1800万回以上アクセスされ、世界中で注目を浴びることとなった、と聞いていますが、お恥ずかしながらそれも知らなかった・・・。そんなバレエ音痴な私が観ても、グイグイ心引き込まれたのが本作でした。
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 セルゲイはウクライナの貧しい町の出身。9歳でバレエ学校に入学するも、その学費を捻出するために、父はポルトガル、祖母はギリシャと出稼ぎにいくことになり、家族はバラバラになってしまいます。それでも少年セルゲイくんは自分のために家族がこんなにまでしてくれる、という思いと何よりもバレエへの愛を胸に誰よりも必死に学び、13歳で英国ロイヤルバレエスクールに入学、単身ロンドンに行き、増々その才能は開花、19歳でロイヤル・バレエ団の史上最年少男性プリンシパルに上りつめるのです。
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その過程の多くを子供の頃から撮影されていたビデオカメラの映像で私たちは知るのですが、とても貧しかった家庭にカメラがあったことが珍しいのだと思いますが、そこに誰よりもセルゲイの才能を信じていた母の想いを感じとることも出来ます。
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バレエ学校で学び、どんどんスキルをあげていくセルゲイのバレエは素人目に見ても素晴らしさがわかる程。練習風景1つ見ても、彼一人が抜きんでているのも一目瞭然なのです。そして様々な公演で舞う彼は本当に美しく、ダイナミックでまさに"優雅な野獣"なのですが、その一方で胸を締め付けられるような息苦しさも感じてしまうのです。それは常に家族のこと、家族と一緒にいることを一番に望んでいたセルゲイなのに結果、自分がバレエをすることで、家族が離ればなれになっている事実に悲しみ、苦しんでいるから、そう思えてなりません。
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子供の頃から「バレエで家族を1つにするんだ」と言っていたのに、両親の離婚が彼の全ての決定打となっていき、それが呪縛のごとく彼を締めつけていきます。バレエを踊ることが天命であるかのような存在なのに、大好きなもので大好きな人たちが傷つき、自分も傷つけられていく。その矛盾にたった一人で向き合わざるをえないセルゲイの孤独は想像を絶するものがありました。
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それでも結局、人は好きなもの、好きなことで救われていきます。それと出会えたことを幸せと細やかでも感じられることで立ち直っていくことが出来ます。孤独のどん底にいた時に彼を助けたのが何だったのか・・・。それがこれからの彼をずっと支えていくのだと思います。そしてこのドキュメンタリー映画を観た後、きっと誰もがこう思うのです。ダンサー、セルゲイ・ポルーニンの今のダンスを観てみたい、と。

By.M
© British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd. / 2016

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