2012年6月アーカイブ

『夜のとばりの物語』

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 皆さんこんにちは、夜の散歩が大好きな女住人Mです。
今回ご紹介するのは夜のとばりがおりた頃に古びた映画館で語られる
6つのお話をモチーフにしたアニメーション『夜のとばりの物語』です。
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 本作はフランス・アニメーション界の鬼才ミッシェル・オスロ監督の最新作。日本でもオスロ監督の「キリクと魔女」、「プリンス&プリンセス」、「アズールとアスマール」は公開されていて、どの作品も一度見ると忘れられないインパクトがあります。私がオスロ監督の作品で初めて見たのは「キリクと魔女」でそのエキゾチックな色彩、緻密な色の重なり、シンプルでストーレート、だけど寓話的でちょっと変わった物語に「こんなアニメに今まで出会ったことがない!」と衝撃を受けました。オスロ監督はフランス人ですが幼い頃、ギニアで過ごしていたそうで、その記憶があの世界観を生み出しているのかな?と。
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 物語は古い映画館で働く映写技師と少年と少女がある不思議な装置を使って様々な時代の様々な国の登場人物に変身して、6つの物語を紹介していきます。
それは呪われた一人の青年を好きになった姉妹の話だったり、村の風習によって生贄にされそうになる美しい少女を助けようとする青年の話だったり、婚約者がいる娘を愛してしまった青年の話だったり・・・全ては愛にまつわるおとぎ話で影絵を使ってそれは表現されます。
オスロ監督曰く、影絵はシンプルだけど神秘的な絵が作れるのでその手法でアニメを作るそうですが、まさに本作も登場人物は黒く塗りつぶされた影、と一見単純なのですが、背景はものすごく繊細に描きこまれていて、光と影のそのコントラストは本当に圧倒されます。登場人物だって影ではあるのですが、衣装だったり髪型だったりが、本当に細かく表現されていて、すごくリアリティがある。とにかくオスロ・アニメの世界観は溜息が出るほど美しいですし、こういった色彩豊かなアニメは(フィルムでなく)デジタル上映だとさらにその魅力が際立つんですよね。もううっとりです。
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(これを大きなスクリーンで見ると、たまりませんよ〜)

そして個人的なオススメ★ポイントは、今回6話あるうちの1つの物語「嘘をつかなかった若者」で、俳優の西島秀俊さん(a.k.a西やん)が初めて声優にチャレンジされていること!!出番は多くはないのですが、この物語の独特の雰囲気、そして少し悲しい情景に西やんの声はピッタリ映えます。目を閉じて聴きたい、でも絵が綺麗だからそういう訳にもいかない・・・私はジレンマと戦いました。

 とにかくオスロ監督が作り出す絵の美しさはどんな言葉を重ねても伝わらないので、百聞は一見にしかず、是非スクリーンでお楽しみ下さい!『夜のとばりの物語』は6/30(土)からシネマイクスピアリにて公開です。

By.M
(C) 2011 NORD-OUEST FILMS - STUDIO O STUDIOCANAL

『ワン・デイ 23年のラブストーリー』

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突然ですが、「男女間の友情は存在しない」派の男住人Aです。皆さん、こんにちは。今回、自分でも思いもよらない映画をご紹介するために、久々に登場しました。その名も、6月23日(土)公開の『ワン・デイ 23年のラブストーリー』。主演はアン・ハサウェイとジム・スタージェス、原作小説はイギリスなど世界中でベストセラーになっているそうです(すみません、知りませんでした!)。

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(こちら、「男女間の友情は存在する」派の若き二人。いやいや・・・。)

そもそもこの作品、「23年の〜」というサブタイトルからして、誰がどう見てもベタベタラブストーリーであることを予感させます。主演俳優も若くて絵になる、いかにもラブストーリーっぽいお二人。おまけに監督も女性。・・・ここまでくると、三十路を過ぎたおっさんの僕などは、作品の方から「お前は観なくてよし!」と拒絶されているような気分にさえなってきます。そんな卑屈な被害妄想をたっぷり抱えたまま、この作品を観た僕だったわけですが・・・オドロキました。面白いのです。ビックリです。やっぱり映画というものは、観てみないと分からないものですね。反省。

さて、ではどこが面白いのか?面白いといっても、当然ながら別にコメディではありません。ストーリーの本筋は確かにラブストーリーです。1988年、主人公二人が大学の卒業式で出会うところから映画は始まり、そこから23年後の2011年まで、近づいたり離れたり、「友達でいよう」と言いながら何だかんだでイチャイチャする色男と美女のカップル。ラブストーリー好きな方は、その辺の成り行きを追うだけでも十分楽しめることでしょう。
しかし、当然ながらその23年という歳月には、恋愛以外にも色々な出来事が起こります。夢を諦める瞬間があったり、またある時は調子良く進む人生を甘く見たり。さらには自分が過ごす23年間に同じだけ老いていく親との関係もある。楽しかったり、辛かったり・・・。この映画では、青春時代を過ぎようとする人々が誰しも経験する出来事やそれに伴う感情が、二人の恋愛と同時進行で丁寧に描かれていくわけです。僕がグッときたポイントは、まさにそこでした(もちろん、そういった出来事は恋愛とも相互作用の関係にあるわけですが)。そして色々あった二人の23年間を観終えた時、年齢を重ねることの素晴らしさや、それでも続いていく人生の味わいみたいなものが、僕にジワジワ〜と迫ってきたのです。・・・感動。

映画というのは公開される前に宣伝のために試写会が行われるのですが、この作品の会場では女性に負けず男性からの反応がとても良いそうです。それらの方々が僕と同じような感想を持っていたかどうかは分かりませんが、少なくともこの作品は単なるありがちなラブストーリーでも、女性だけに向けられた映画でもありません。僕のように恋愛モノは興味なし!というあなたも、普段はアクション映画や社会派ドラマしか観ないよ!という硬派なあなたも、スルーしてはもったいない一作です。

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(で、結局二人はくっ付くの?・・・というところは映画館でご確認を。)

ちなみにチラシには「衝撃と涙のラスト15分」と書かれてますが、恐らくその「衝撃と涙」が過ぎた(と思われる)本当の本当のラストシーンが、僕にとっては忘れられない名シーンでした。それはもしかしたら、単なる男の願望なのかもしれません。ネタばれになりそうなのでここでは語りませんが、皆さんがあのシーンをどう感じるのか、とても興味津々です。

By.A

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『愛と誠』

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みなさんこんにちは。梅雨入りし、ジメジメっと鬱陶しい季節の始まりですが、今回はそんな時に見るのにピッタリなスコ〜ンと抜けた映画『愛と誠』をご紹介致します。

 『愛と誠』はガサツで暴れん坊の不良少年・誠とお嬢様育ちの愛との結ばれるハズのない境遇にある二人の純愛ラブ・ストーリーです。原作は1970年代を代表する伝説的なアニメ。今回はその『愛と誠』を妻夫木聡、武井咲を主演に迎え、三池崇史監督で映画化です!三池監督と言えば、「一命」や「十三人の刺客」といった作品から「ヤッターマン」、「忍たま乱太郎」とエンタメ映画を幅広く撮る方ですが、その昔はもっととんでもない映画ばかり作っていた方ですからね。(褒め言葉です)最近のようにファミリー映画を作るようになっても、押さえきれない三池魂が炸裂して、相変わらず唯一無二の三池印の映画を撮る方ではありますが・・・・(褒めてます)。
そして今回もご多分にもれず、どこを切っても三池印な作品が出来上がりました。

 映画の舞台は1970年代のド昭和。妻夫木くんが学ラン着て不良高校生の太賀誠を、今、最も売れっ子の武井咲ちゃんがお姫様カットでブリブリなお嬢様・早乙女愛を演じるのですが、もう予告編からヘンテコでひっくり返るかと思いましたが案の定、映画自体もヘンテコでデタラメで、最高な仕上がり!
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妻夫木くんも記者会見で「なかななふざけた作品だなと(笑)何十億とヒットする映画ではないと思いますが“何だこの映画!”と言う面白さを感じて貰えると思います」と三池監督が横にいるのに、包み隠さずそう語っていましたが、まさにそんな映画です。

いくら童顔系とは言え31歳になった妻夫木くんが高校生役、しかも時に歌い踊るんです。武井ちゃんも負けずに昔の大映ドラマのごとくオーバーリアクションで歌い、演技をするんです。二人とも売れっ子さんだし、仕事選んでも良いよ、と言いたくなるぐらいに・笑。しかも主演の二人以上に、早乙女愛に恋する同級生の岩清水くんを演じる斎藤工もかなりふっ切って演技してますし、今年49歳の井原剛まで「おっさんなのに学ランかよ」ですし、もう「どないやねん」と総ツッコミしたくなります。でも、全てがそんな世界観なんで途中からは「もう何でもありだね」ってな気分で細かいことは気になりません。ふざけてる感満載ですけど、ちゃんとしっかり作られた映画ですからね。やっぱり三池崇史と言う人は凄い人です。
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(岩清水くんも熱唱〜) 

 そして本作はそんなアク強過ぎなキャラばかりが登場するのですが、その中で最も際立ったのが、誠に恋をしてしまうスケバン・ガムコを演じた安藤サクラです。父は奥田瑛二、母は安藤和津、俳優の柄本明の息子さんでこれまた俳優の柄本祐と結婚した彼女。そのプライベートの側面が既に凄いのですが、2009年公開の「愛のむきだし」以降彼女の演技はもう既に両親のキャリアをとっくに越えてると言っても過言でないと個人的には思っています。すっごく美人さんではないのを逆手にとっての“ブサイク”役が多いのですが、本作での演技も尋常じゃありません。安藤サクラの演技は世界記録を持つアスリートが自身でその記録を少しずつ伸ばしていくような、そんな演技です!とにかく、ガムコに括目せよ!です。
ジメジメなんかぶっ飛ばせ! 『愛と誠』は6/16(土)よりシネマイクスピアリにて公開です。

By.M
(c)2012『愛と誠』製作委員会

『サニー永遠の仲間たち』

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 アンニョンハセヨ、女住人Mです。
映画の中にはちょっとしたホツレ感はあるけれども、見るものを虜にしてしまうタイプのものがあり、それを私は【愛され系映画】とよんでいますが、まさに今、口コミでその評判が広まっている【愛され系映画】があります。
今回は韓国映画『サニー永遠の仲間たち』をご紹介致します。
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 主人公で専業主婦のナミは家族3人で何不自由のない生活をしています。そんなある日、母親の見舞いに訪れた病院で25年ぶりに高校時代の友人チュナと再会しますが、彼女は病に冒されていました。チュナは「もう一度、“サニー”の皆に会いたい」とナミにお願いをします。“サニー”は高校時代の仲良し7人グループの名前でした。チュナとの再会を機にナミは残りのメンバーを探すことになりますが、それは彼女にとっても失くしたものをもう一度取り戻す旅となるのです。

 あらすじを聞くだけだと、「あ〜なんかありがちな展開」と思われるかもしれませんが、それでこの映画を“見ないBOX”に入れるのは勿体ない!本作には語るべきたくさんの魅力が詰まっています。
この物語はナミや“サニー”の仲間たちの現在と高校生当時、25年前の時間を移動しながら語られるのですが、その場面転換の見せ方が印象的でその美しさに先ず感動!見ているこっちも自然とタイムスリップしちゃう上手さがあります。
しかも高校時代の“サニー”の皆はベタでちょっとデフォルメされたキャラクター設定で、25年前だし、今見るとダサさと恥ずかしさの塊なのですが、そもそも若い頃って、ダサいし、小っ恥ずかしいものじゃないですか。彼女たちは遊ぶのも喧嘩するのも一生懸命で、そんな元気でひたむきな彼女たちを見ていると自分の中の想い出がジュワ〜っと引き出されて、まるで自分が“サニー”の皆と同じ時を生きている錯覚まで起きるんです。
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(なにをやっても楽しいお年頃♪ )

そしてそんなにキラキラしていた彼女たちも、大人になってそれぞれの人生を生きている中で、いろいろな現実とぶつかっていきます。家族にはただ母親としか思われていない、なんか旦那が浮気してるっぽい?あ〜仕事上手くいかない、姑にいびられる〜などなど。若さと青春を謳歌しまくっていた彼女たちを知っているだけに、この現実がまた切ない!でも、大人になると誰しもそういう経験するじゃないですか。大人になるって、一生懸命さ、ひたむきさ、純粋さといった若さの証みたいなものが一番最初に犠牲になりやすいと言うか・・・でもナミは“サニー”の仲間たちを探すことで、また“サニー”の皆はチュナの元に集まろうとすることで失くしたものを取り戻そうとするんですね。

映画を見終わった時に私たちはノスタルジックな過去を辿りながらも、今を見つめ、大人になった今でも精一杯、純粋に生きることは出来る!いや無理でもそうやって生きたい!と25年前のそして現在の“サニー”の仲間たちに勇気を貰うのです。
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(映画を見終わった後は、皆さんもこんな笑顔になるハズ♪ )

 劇中使われる25年前の洋楽ヒット曲も映画の彩りとなり、もうこの映画一度見たら好きにならずにいられない!
そんな【愛され系映画】の決定版です。
是非、お友達を誘って見に来て下さい!『サニー永遠の仲間たち』は6/9(土)からの公開です。“サニー”の皆に会いに来て〜♪

By,M
(C)2011 CJ E&M Corporation,All Rights Reaerved

『ミッドナイト・イン・パリ』

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 パリでお金を掏られた経験があります・・痛い目に遭ったけどそれでもパリが大好き!女住人Mです。
今回ご紹介するのはウディ・アレンが真夜中のパリに魔法をかける『ミッドナイト・イン・パリ』です。

 本作は本年度アカデミー賞で脚本賞を受賞しただけでなく、アメリカ本国におけるW・アレン作品の最大のヒット作にもなりました。今年77歳になるW・アレンですが、衰え知らず、いやむしろ絶好調!往年のW・アレンファンにもそしてビギナーの方にも楽しんで頂ける1本です。
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(ポスターのビジュアルも名作ゴッホの「星月夜」をモチーフに♪ )

 婚約者のイネズ(レイチェル・マクアダムス)と彼女の両親と一緒にパリを訪れている主人公のギル(オーウェン・ウィルソン)。彼はある晩、深夜0時の鐘の音に導かれ、1920年代のパリにタイムスリップしてしまいます。そこは活気みなぎる芸術と文化が花咲く、黄金時代(ゴールデンエイジ)と呼ばれていた頃。そこでギルは憧れの作家フィッツジェラルドやヘミングウェイを始めダリやピカソと数々の憧れのアーティストと出会い、ピカソの愛人で魅力的な女性アドリアナ(マリオン・コティヤール)と何だか良いムードにもなっちゃいます。現状に満足していなかったギルはこの日から現実逃避のように毎夜0時の鐘と共に1920年代にタイムスリップすることになります。
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(W・アレン映画と言えば、美女で固められたキャスト陣。ヒロインの一人はフランス人オスカー女優のマリオン・コティヤール。)

 映画冒頭ではお馴染みのパリの観光スポットが長いイントロとして映し出されますが、もうそこから夢の旅はスタートです。主人公のギルよろしく、パリにいる私と言うシチュエーションを妄想するだけで既に夢心地。しかもギルがタイムスリップするのは1920年代ですからね。現代人から見るとパリがさらにモダンに見えて、ギルと同じように「うぉ〜パリ最高―!オシャレ〜」てなもんです。
そんな魅惑の街パリの過去と現在をギルと一緒に行き来するだけでも楽しいのですが、本作は過去に憧れをもつギルが今の自分を見直すきっかけを得る成長物語にもなっている所がミソ。よく「昔は良かったな〜」と人は回顧しがちですが、でもそれって今をちゃんと生きていたら、やっぱり「今、最高〜!」となる訳ですし、それにいつの時代もその時、その時の魅力は必ずある訳で・・・そういうのを、W・アレンは映画の中でサラっと描いちゃうあたり、本当ニクイな〜と思います。

そして、主人公のギルを演じたオーウェン・ウィルソンの演技がまた良い!!良い!人付き合いが悪くて、協調性がなくて、気が乗らない誘いには見え見えの嘘をつく、何とも偏屈男子ではありますが、コメディセンス抜群でハンサムなのにどこかとぼけた風味が漂うオーウェンが演じることでとっても魅力的なキャラになっています。加えてW・アレンファンなら一目瞭然、本作のオーウェンの演技はW・アレンそのもの。今後もウディ・アレン×オーウェン・ウィルソンのシリーズ化を切望です!オーウェンは2代目W・アレンを襲名出来るんじゃないか、とさえ思っちゃいます。
『ミッドナイト・イン・パリ』は5/26(土)からシネマイクスピアリで公開中です。パリでの素敵な時間旅行にいらして下さい♪

By.M
(c)2011 Mediaproduccion,S.L.U,,Versatil Cinema,S.Land Gravier Productions,Inc.

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