2017年9月アーカイブ

『エイリアン コヴェナント』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。
今週ご紹介するのは私自身、友達の口コミを聞いて観に行った作品、9/15(金)公開『エイリアン コヴェナント』です。
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 H・R・ギーガーがデザインした恐ろしくも美しく残虐なクリーチャーが宇宙船の中で人間たちを次々に襲う「エイリアン」シリーズ。生みだしたのはリドリー・スコット監督。38年前の1979年に「エイリアン」、1982年に「ブレードランナー」を監督し、この2作で映画史に名を残すSF映画の巨匠として知られるようになったのは言うまでもありません。最近ではマット・デイモンが火星に一人ぼっちになる「オデッセイ」を監督し、大ヒットしたことも記憶に新しいところ。

 本作は「エイリアン」の前日譚を描いた「プロメテウス」の続編、"エイリアン誕生の秘話"を解き明かす物語。つまりシリーズ第一作目1979年版「エイリアン」に続く物語。これを観ると「それで「エイリアン」が始まったのかぁー!」と腑に落ちるという訳です。
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 物語は宇宙移住計画の希望を背負って冬眠状態の男女2000名を乗せたコヴェンナト号が惑星に向かっている途中、アクシデントから甚大なダメージを受け、数十人が命を落としてしまったところからスタートします。女性乗組員ダニエルズ(キャサリン・ウォーターストン)ほか生き残った12名のクルー、最新型アンドロイドのウォルター(マイケル・ファスベンダー)がコヴェナント号の修復をしていた時に移住可能な環境と判断出来る未知の惑星を発見。一縷の望みをかけて惑星に降り立った彼らですが・・・・
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 お察しの通り、そこでクルーたちは次々にエイリアンに襲われていきます。しかもウォルターの前世代型(「プロメテウス」でも登場した)アンドロイド、デヴィッド(マイケル・ファスベンダーの一人二役)と遭遇。彼によって惑星の謎がどんどん明かになっていくその過程でどんどんクルーたちは殺されるその容赦ない感じは"エイリアン"ファンであればあるほど「こういうのが観たかった!」と心から思ってもらえる展開です。

途中でエイリアンの謎のキーとなるスケッチが出てくるのですが、またこれがグロいのに美しいんですよね。残虐なシーン以上にそれに伴う美しさに息を飲むシーンも満載、観ている間中ドキドキは止まりません。
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 そして本作においては、最近のリドリー・スコットのお気に入り(「プロメテウス」「悪の法則」と出演作が続く)、マイケル・ファスベンダー(以下ファス)の存在なくしては何も語れません。本作は完全なる"エイリアン"映画にも関わらず、観終わるとファスのことで頭がいっぱいになると言う不思議な現象に陥ります。演技派ファスのアンドロイドっぷり、不穏&邪悪っぷりに心を奪われると同時に「リドリー、どんだけファスが好きなんだ」と・・・。「エイリアン」と言えばタンクトップのリプリーがアイコンだっただけに、本作でも女性乗組員ダニエルズがタンクトップ姿で勇ましく戦いますが、ヒロインは明らかにファスなのでした。
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絶対的力を持った神(創造主)の恐怖、一方での危うさに震えながらもリドリー・スコット監督の"エイリアン"とファスへの偏愛っぷりを感じた力作でもありました。今年80才の人が作ったとは到底思えませんぜ!

By.M
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『僕のワンダフルライフ』

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 以前紹介しました「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」がヒットする中、犬派の皆さまお待たせしました、わんこ映画の登場です。今週のつぶやき映画は9/29(金)公開『僕のワンダフルライフ』です。
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 車に閉じ込められていた所を少年イーサンに助けられた一匹の犬。ベイリーと名づけられ楽しい時も悲しい時も一緒にいた彼ら。でも人間より寿命が短いベイリーはイーサンとお別れする日がやってくる・・・が、ベイリーはまた生まれ変わる。記憶を残したまま、イーサンに再び出会うために何度も転生を繰り返すのです。でも生まれ変わるのは見た目も環境も全く違う犬として・・・
本作は最愛の飼い主との再会を夢見て3回生まれ変わったわんこのお話です。
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 監督はこれまでも「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」「HACHI約束の犬」とわんこ映画の傑作を作り続けているラッセ・ハルストレム。本作で犬と人間の絆を描く"わんこ三部作"が完成です。(この他にも「ギルバート・グレイプ」「ショコラ」などの監督さん、と聞けばその品質保証感は何となくわかっていただけるかもしれません。)ハートウォーミングな作品を作ることに定評があるハルストレム監督が描くわんこ映画なので、間違いない!と断言出来ましょう。
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 言わずもがな登場するのは愛らしいわんこばかり。イーサンが子供の頃に出会うベイリーはゴールデン・レトリバー、次に生まれ変わるとジャーマン・シェパード、次にコギー、そしてセント・バーナードと様々な種類のわんこが登場。どのわんこも可愛い過ぎてもう本当にたまりません。劇中、4匹のわんこが登場しますが「映画監督は動物と子供の映画が撮れて一人前」と言われるよう人の言うことなんて聞いてくれない、ましてや言葉が通じないわんこの演技はトレーニングを重ねたプロわんこがやるのが通例。でもハルストレム監督はキャストと犬の自然な演技を撮りたくて、メインの4匹は映画初出演の子ばかり揃えたそう。それもあってどのシーンも自然で、とにかく観る者の心を癒しまくりなカットばかりなんです。
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 でもそんな可愛いわんこ盛り映画だとしても、愛犬家過ぎて「途中で死んじゃうシーンがあるんでしょ?そんなの観られないよ」という方もいらっしゃると思います。確かに家族も同然の彼らとの別れ、実際に飼っていたり、飼った経験がある方なら自分の時を思い出し、想像し、観られない・・・と思うのも当然です。
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でも本作は、ご主人様と一旦別れてしまったベイリーがその愛情の深さから転生し、何度もご主人様との再会を願うお話。別れは決して避けられないけれど、それでもまた別の形で出会いたい、いや出会えるかもしれない、という我らの切なる願いを形にしてくれた物語なんです。
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しかも自分が愛するわんこも自分と同じようにずっと一緒にいたいと思ってくれていると嬉しいなぁ、という気持ちも形にしてくれている。この映画を観るとミラクルな夢に想いを馳せることが出来ますし、改めて出会っている今この瞬間、精一杯愛情を捧ぐことは何よりも大切!と思えます。

 言葉は通じなくても心は通じ合える、そんな経験をした全てのわんこ好きな方に捧げます!
あっ、にゃんこ派の方もベイリーを愛しい猫ちゃんに脳内変換して是非、ご覧ください。

By.M
©storyteller Distribution Co.LLC and Walden Media,LLC

『ダンケルク』

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 こんにちは女住人Mです。「この監督の新作は必ず映画館で観る!」という方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?今回ご紹介するのは9/9(土)公開、クリストファー・ノーラン監督最新作『ダンケルク』です。
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 第二次世界大戦下、フランス北端の港町ダンケルク。ドイツ軍によってこの地まで追い詰められた英仏連合軍約40万人。時の英国首相チャーチルは彼らをダンケルクから救出することを命じ、イギリス国内から軍艦ほか、民間の漁船を始めあらゆる船舶を総動員して撤退させる"ダイナモ作戦"を発動。本作は桟橋で救出の舟を待つ兵士たち、小型船で救助に向かう民間人の親子たち、空からの襲撃を何とか阻止しようとする英国空軍兵士たち、と陸・海・空の3視点からの救出劇を描きます。
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 クリストファー・ノーラン、代表作に「ダークナイト」「インセプション」「インターステラー」と47歳にして既に巨匠の風格が漂う、2000年代を代表する映画監督。その彼が初めてチャレンジする史実の映画化です。観客に劇場で映画を楽しんで貰うことに全ての神経を注ぐノーラン監督が自身の映画で大切にしていることが"没入感"と"共有体験"。本作でも映画が始まってすぐ"没入"体験は始まり、本編尺106分という短さながら、疲労感は長編級、ダンケルクでのダイナモ作戦への仮想体験度120%。
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加えて冒頭から巨匠ハンス・ジマー大先生が手掛けるスコア(映画音楽)が絶好調!特に本作では弦楽器の音色が追いつめるように鳴り響き、かつ急かすように時計の秒針の音がカチカチカチカチと刻み続け、心臓音と合い間ってその煽られ感たるや。登場人物たちとの共有体験度合いも相当のものです。またCGを嫌う現物嗜好のノーランは主要の場面はダンケルクで撮影し、実際に舟を沈没させ、実物の空軍機スピットファイアや駆逐艦を借りて撮影したりと一切妥協なし。大群の人だって書割です。(さすがにこれはCGの方が安いし楽じゃない?ねぇ、ノーラン)
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(英空軍パイロット・ファリア、演じるはトム・ハーディー。マスクを被っているシーンが多いけど抜群の演技力で観る者もノーランの心も離さない。)

 ただこういう作品を"戦争映画"という括りで敬遠する方もいると思いますが本作はタイムリミットを肌で感じるまるでサスペンス映画のよう。ダンケルクから一刻も早く逃げ出さねばという緊張感、早く兵士たちを救わねばという焦燥感、いつドイツ軍に襲われるともわからない切迫感をただひたすら追体験する映画なんです。それが圧倒的な映像と音響で描かれる・・・もう観ているこっちの体力もどんどん奪われます。

 そして"戦争映画"=残酷描写となりがちですが「そういうのは過去の名作が描いてきたから・・・」とノーランが言ったかどうか定かではないですが、流血シーンや目を覆いたくなるようなシーンは一切なく、とにかく生きてhome(故郷)に帰ろうとする兵士の必死な姿が重点的に描かれます。そんな映画になっているのもダンケルクにおいては敵を倒すことが勝利ではなく、生き抜くことが命題だったからでしょう。
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劇中でも生きて帰ることに罪悪感を抱える兵士の姿も描かれますが、生き抜くことが全てのこの闘いにおいて、彼らはただ生きて帰ったことを祝福される存在となります。もちろん、その一方で犠牲になった者の物語もあり、生き伸びてもその後に絶望しかない人生を抱える者もいます。それでも"生き抜く"ことは希望の一歩になりうる・・・。これまでの"戦争映画"とは違うベクトルで表現された本作、是非スクリーンでご体感ください!
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(陸は1週間、海は1日、、空は1時間と異なる時間軸で描かれる本作。
セリフが少なめで余白がある分、イマジネーションも膨らみ、こういった演出も光ります。)

 戦地に向かった兵士のほとんどは若者だったため、本作においてもメインで登場する役者は今後活躍が期待される役者が揃いました。脇を固めるのはノーラン作品常連俳優のキリアン・マーフィー(上手すぎ!)、トム・ハーディ(かっこよすぎ!)、そしてオスカー俳優マーク・ライランス(渋すぎ!)、英国を代表する名優ケネス・ブラナー(おいし過ぎ!)が加わり若き演技派イケメン俳優から、魅力たっぷりな名優まで英国(界隈)の素敵な俳優勢ぞろいとなっています。
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(自身の船でもって救出に向かうドーソン(マーク・ライランス)と息子と同乗する青年ジョージ。彼らの物語がまたたまらない。)

息詰まるシーンも多いですが、キャスティングにも定評なノーランが選んだ俳優たちを愛でつつ、彼らに心を奪われてみる、という楽しみ方もオススメします!

By.M
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 皆さん、こんにちは女住人Mです。夏休みも終わり、単館系、公開劇場が少ない系の良作映画が続々とシネマイクスピアリで公開されています。今回は都内では既に大ヒット上映中、お客様からのリクエストも多かった『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』(9/9(土)2週間限定上映)をご紹介します。
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 タイトルからわかる通り、本作はバレエダンサー、セルゲイ・ポルーニンのドキュメンタリー映画。端正な容姿と類まれなる表現力で世界中のバレエファンを魅了し、英国ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルになるも、2年後の人気絶頂時に電撃退団・・・。そんな彼のこれまでの人生を余すこと映しだし、その素顔に迫ります。
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 バレエ界きっての異端児として今も注目を浴びている彼。最近ポルーニンの来日公演詐欺という残念な事件も起こりましたが、裏を返せば人気の証とも言えましょう。でも私自身、この映画が公開されるまでポルーニンの存在を全く知らなかった・・・。彼はグラミー賞にもノミネートされたホージアのヒット曲「Take me to church」を使い踊ったMVがYou Yubeで1800万回以上アクセスされ、世界中で注目を浴びることとなった、と聞いていますが、お恥ずかしながらそれも知らなかった・・・。そんなバレエ音痴な私が観ても、グイグイ心引き込まれたのが本作でした。
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 セルゲイはウクライナの貧しい町の出身。9歳でバレエ学校に入学するも、その学費を捻出するために、父はポルトガル、祖母はギリシャと出稼ぎにいくことになり、家族はバラバラになってしまいます。それでも少年セルゲイくんは自分のために家族がこんなにまでしてくれる、という思いと何よりもバレエへの愛を胸に誰よりも必死に学び、13歳で英国ロイヤルバレエスクールに入学、単身ロンドンに行き、増々その才能は開花、19歳でロイヤル・バレエ団の史上最年少男性プリンシパルに上りつめるのです。
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その過程の多くを子供の頃から撮影されていたビデオカメラの映像で私たちは知るのですが、とても貧しかった家庭にカメラがあったことが珍しいのだと思いますが、そこに誰よりもセルゲイの才能を信じていた母の想いを感じとることも出来ます。
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バレエ学校で学び、どんどんスキルをあげていくセルゲイのバレエは素人目に見ても素晴らしさがわかる程。練習風景1つ見ても、彼一人が抜きんでているのも一目瞭然なのです。そして様々な公演で舞う彼は本当に美しく、ダイナミックでまさに"優雅な野獣"なのですが、その一方で胸を締め付けられるような息苦しさも感じてしまうのです。それは常に家族のこと、家族と一緒にいることを一番に望んでいたセルゲイなのに結果、自分がバレエをすることで、家族が離ればなれになっている事実に悲しみ、苦しんでいるから、そう思えてなりません。
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子供の頃から「バレエで家族を1つにするんだ」と言っていたのに、両親の離婚が彼の全ての決定打となっていき、それが呪縛のごとく彼を締めつけていきます。バレエを踊ることが天命であるかのような存在なのに、大好きなもので大好きな人たちが傷つき、自分も傷つけられていく。その矛盾にたった一人で向き合わざるをえないセルゲイの孤独は想像を絶するものがありました。
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それでも結局、人は好きなもの、好きなことで救われていきます。それと出会えたことを幸せと細やかでも感じられることで立ち直っていくことが出来ます。孤独のどん底にいた時に彼を助けたのが何だったのか・・・。それがこれからの彼をずっと支えていくのだと思います。そしてこのドキュメンタリー映画を観た後、きっと誰もがこう思うのです。ダンサー、セルゲイ・ポルーニンの今のダンスを観てみたい、と。

By.M
© British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd. / 2016

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