2012年2月アーカイブ

『その街のこども 劇場版』

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17年前、兵庫県西宮市に住んでいた僕にとって、1月17日は3月11日と同じく忘れられない一日です。こんにちは、男住人Aです。そして間もなく、東日本大震災から一年が経とうとしています。

そんな3月、ぜひ皆さんに観ていただきたい作品があります。それが今回ご紹介する『その街のこども 劇場版』。この作品はもともと阪神・淡路大震災からちょうど15年目の当日にNHKで放送されました。その後、評判が評判を呼んで「劇場版」として映画館で公開されることになったのです。僕も大好きなこの作品を、「キネマイクスピアリ〜舞浜で名画を〜」シリーズの3月作品として、今回一週間限定で上映することになりました。
なお今回のブログはかなり個人感情が入っています。皆さんの感想とは違う部分があるかもしれませんが、ウラブログということで、お許しください!

この映画の主人公は、神戸で震災を経験し、しばらく後に様々な事情で神戸を離れた二人。震災の時「その街のこども」だった二人が、15年後、大人になって神戸に戻ってくるところから物語は始まります。一人は15年目の「お祈りの会」に参加するためにやってきた、佐藤江梨子さん演じる女性。もう一人は“神戸なんてキライ”と言いながら出張ついでに何となく新神戸駅に降り立った、森山未來さん演じるサラリーマン。ずっと神戸を避けてきた二人が偶然一緒に過ごすことになった、震災15年目の朝を迎えるまでの一日が描かれます。

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(複雑な役柄を絶妙に演じる森山未來、すごいです)

僕は二人が15年もの間、神戸に近づかなかった気持ちが分かる気がします。楽しかった街の思い出に、いちいち震災の影がくっ付いてくるからです。たとえ街がきれいに復興したとしても、そのきれいな街並みが生まれた理由はあの日の震災にあるわけで、僕の場合、嬉しい気持ちにはなりませんでした。辛い思い出にはなるべく向き合いたくないものです。でもこの映画の二人は、その思い出や震災の不条理に改めて向き合うために、15年目の神戸の街を歩くのです。二人は街を歩きながら色々な話をします。死んでしまった親友のこと、震災直後の相場の高騰のこと、学校が休みになって喜んだこと、耐震建築のこと。そして、忘れたふりをしてもどうしても忘れられない「震災」のこと、神戸の街のこと。人間の不幸とは?不幸の辛さを克服する方法とは・・・?
そして語り明かした二人は最後に、“震災を忘れたふりをしない”生き方を選びます。

東日本大震災を経験した今、この二人と同じような想いや答えの見当たらない問いを、ますます多くの人々が共有することになりました。それは悲しいことではありますが、だからこそ今、この映画を観てほしいと思います。僕はこの映画を観て、さんざん泣きながらも、なぜか慰められた気がしました。ただ悲しいだけでなく、やたらに励ますのでもなく、不思議な力を持った作品です。

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(本編にも登場する「シンサイミライノキ」)

ちなみに主演のお二人は神戸出身で、当時震災を経験したそうです。映画の設定と同様、「その街のこども」だったわけです。脚本の渡辺あやさんも、出身は西宮市。震災をリアルに受け止めたキャストやスタッフが揃ったからこそ、まるでドキュメンタリーのような、想いのこもった作品が完成したのだと思います。本編の最後には、実際の15年目の「追悼の集い」の様子も映像で流れます。

シネマイクスピアリでの上映は、3/10(土)〜16(金)の一週間限定、朝11:00〜の上映です。ぜひご覧ください。

By.A

© 2010NHK

『ドラゴン・タトゥーの女』

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皆さん、こんにちは。「ミュンヘン」以降ダニエル・クレイグが大好物の女住人Mです。
そんな私がこの映画を紹介しない訳がない!ダニエル・クレイグ出演『ドラゴン・タトゥーの女』です。

映画の原作はスウェーデンでベストセラーになったミステリー小説「ミレニアム」。
その後全世界でも大ヒットし、スウェーデンで映画化(日本では2010年に公開)、そして今回「セブン」、「ファイト・クラブ」、「ソーシャル・ネットワーク」と言った独特の映像美が持ち味のデヴィッド・フィンチャーがハリウッド・リメイク!

2/10(金)から公開されて以降、本作の巷の話題は“ドラゴン・タトゥーの女”こと、天才ハッカー・リスベットを演じるルーニー・マーラの熱演です。「ソーシャル・ネットワーク」ではおぼこい女子大生を演じていた彼女が一転、体中にピアスを開け孤高のハッカー・リスベットに大変身。スウェーデン版のリスベットを演じたノオミ・ラパスの方がより原作に近いとも言われていますが、ルーニーちゃんが演じた事でどこか小動物的な可愛らしい要素も加わり、ルーニー版リスベットを支持する方も多いようです。そしてその証拠とも言えましょう、本作の演技でオスカー主演女優賞にサプライズ・ノミネート!今後が最も期待されている若手女優であることは言うまでもありません。
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(来日時のルーニーちゃん。可愛い〜の〜)

しか〜し、そんなルーニーちゃんの活躍よりも何よりも、本作の肝、40年前の失踪事件を探るジャーナリスト・ミカエルを演じるダニエル・クレイグが格好良いこと、良いこと!!!ダニエルと言えば今やジェームズ・ボンドが板に付いてきた役者ではありますが、その場合、たいていトム・フォードのスーツ、時々海パンです。が、今回のダニエルは干されたジャーナリスト役と言うこともあり、いつもよりカジュアルな衣装が多め。おまけに舞台は極寒のスウェーデンなのでセーター、G-ンズ、メガネ、マフラーと冬服をまとうダニエルを長時間堪能出来るまたとないチャンスで、時々パンツ一丁と言うファン・サービスも忘れてはいません。(笑)
こんなSEXYなジャーナリストいる訳ないじゃん、と言うところでは役作りとしてはどうかとは思いますが、見ている者に喜びを与えるのも映画の使命。かっちょ良すぎるダニエルを眺められるだけでもう良いじゃないか、良いじゃないか。
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(スーツは男の戦闘着だわね〜)

と、全く映画の説明にはなっていませんが、冒頭からフィンチャーWorld炸裂、40年前の失踪事件を探っているうちに、とんでもない事件に巻き込まれていくスリリングな物語の展開と美しい映像体験、これはもうスクリーンで見ないと、見ないと!

本年度アカデミー賞5部門ノミネートの『ドラゴン・タトゥーの女』は2/10(金)よりシネマイクスピアリで公開中です♪

By.M
(配給:ソニー・ピクチャーズ)

皆さんこんにちは。インフルエンザや風邪が巷で流行っていますが、皆さんご機嫌如何ですか?マスク、うがい、手洗いを欠かさない女住人Mです。

今回ご紹介する作品は2/27(日本時間)に発表されるアカデミー賞2部門にノミネートされている
『ものすごくうるさくてありえないほど近い』です。

9.11の同時多発テロで最愛の父を失くした少年オスカー。父親のクローゼットから鍵を見つけたことから、鍵穴を探す旅に出かけます。そしていろいろな人と関わっていくことで、父を失くした喪失感と向き合っていくことに・・・

本作は2005年に発表された若手作家ジョナサン・サフラン・フォアの同名小説を映画化した作品です。これまでの小説にはないビジュアルにも訴えるスタイルで書かれたこの作品は9.11文学の金字塔とも言われ、世界30カ国で翻訳されているベストセラー本です。
本の映画化と言うのは、読者の頭で構成される物語のイメージに勝ることが難しく、どうしても「あれが想像と違うのよね〜」と思ってしまうものです。
私は映画を見た後に原作を読んだのですが、映画を見ながら「原作が良いんだろうな〜」臭をプンプン感じてはいました。実際、映像化にあたって原作で詳しく表現されている所が割愛されている部分はありましたが、それでもなおこの映画に心奪われてしまった要素はオスカーを演じたトーマス・ホーン君の演技力でした。
日本でも子役ブームではありますが、トーマス君は小学校の舞台劇でキリギリスを演じたことが唯一の演技経験と言う、まったくの素人です。たまたまクイズ番組に出ていた所をプロデューサーに見初められたのが、映画デビューのきっかけ。

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(知的好奇心旺盛なオスカー君)

オスカーは他人とのコミュニケーションを取るのがちょっと不得意なキャラクターとして描かれるのですが、その演技がもう本当素晴らしい&凄い!!「リトル・ダンサー」を監督し子役の演出に定評があるスティーブン・ダルドリー監督の演出のうまさもあるのかもしれませんが、それでもこの演技力はもう脱帽です。
原作の熱狂的ファンの方はいろいろ思われるかもしれませんが、トーマス君の演技に心を揺さぶられまくった私は「トーマス君がもう本当素晴らしいから、それだけで良いじゃないか〜」と声を大にして言いたい。

強い絆で結ばれていた父親との突然の別れ。それはオスカーにとっての心の闇です。でもその闇を抱えながらも「鍵穴を見つければ何か答えがあるかも」と、時に理不尽なこの世界になんとか意味付けをしようとするその姿に、ただただ胸がいっぱいになりました。
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(オスカーのお父さんはトム・ハンクス。登場シーンは多くないのですが、キラリと光る存在感はさすがトム・ハンクス!)

絶望を経験してもなお、仄かな光を見い出そうとする人間の姿を描く
『ものすごくうるさくてありえないほど近い』は2/18(土)からシネマイクスピアリにて公開です。是非、スクリーンでお楽しみ下さい!
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(おまけ画像:映画を見てのお楽しみ♪)
By.M
(C) 2011 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

『J・エドガー』

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皆さん、こんにちは。この時期になると、もし自分がオスカーを受賞したらスピーチで何を言おうと妄想する女住人Mです。

さて、先日アカデミー賞ノミネート作品やゴールデングローブ賞の発表がありましたが、ある一人の男優がまた悔しい思いをしていました。彼の名前はレオナルド・ディカプリオ。
「ギルバード・グレイプ」や「タイタニック」をタイムリーに見てきた世代としては彼が大人へと変貌する様に未だに違和感がありますが、そんなディカプも今年38歳。ひょえ〜。アイドル的存在だった彼も演技派俳優としてオスカー主演男優も2度ノミネートされ着実にキャリアUPしてきました。そんな彼がオスカー主演男優賞をモノにすべく選んだ作品がクリント・イーストウッド監督の『J・エドガー』でした。
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FBI初代長官、J・エドガー・フーバー。約50年もの間、国を守る事に生涯を捧げてきた男。でも彼は国家のあらゆる秘密を把握していた為、その存在は大統領たちからも恐れられていました。そんな彼が作り上げたFBIとはいったいどんな組織だったのか?果たしてその裏側とは・・・といったことが本筋で描かれていそうな『J・エドガー』ですが、イーストウッドがそんなわかりやすい映画を撮る訳もなく、本質は国家の秘密より、自身の秘密に囚われたJ・エドガーを描きます。

彼は小さい頃から母親の寵愛を一身に受けて育っています。世間に認められ、地位、名誉ある人間になることが一番の人としての道。母親の愛情は時にエドガーを追い詰め、次第と彼はある秘密を抱えていることに苦悩します。
それはイケメン王子・アーミー・ハマー演じる側近クライド・ドルソンへの想いです。自分の秘密がどれだけ自分を脅かすか知っている彼にとってクライドの存在は抑圧する想いでしかありません。しかし、ある日それが放たれる時が来るのです。それはどんな人に対しても威圧的で他者を常に論破するほどの雄弁さを持つJ・エドガーとは思えない不器用な言葉でもって語られます。なんなんだ、このピュアっぷりは!!!!
もう、下手なラブストーリーより猛烈に泣けます。

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(君の側には僕がいる・・・)

イーストウッドのもとでJ・エドガーという複雑な人間を演じ切ったディカプはこの役に賭けていたと思います。今回はアカデミー賞主演男優にノミネートすらされませんでしたが・・・。
でも、きっと次回作、バズ・ラーマン監督「グレイト・ギャッツビー」の演技で再びリベンジしてくれると思います。
オスカーのノミネートには漏れましたが充分見応えある『J・エドガー』はシネマイクスピアリにて1/28(土)より公開中です!

By.M

(C) 2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

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