『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。今回は11/19(土)公開『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』をご紹介いたします。

 小説というのはそれを書いた小説家だけに注目が集まりがちですが、彼らの才能があればそれだけで良い訳ではなく、その著作物が広く、多くの読者に読んでもらえるよう助言し編集し、時に作家を陰ながら支える"編集者"の存在も重要です。そして本作の主人公マックスウェル・パーキンズはまさにアメリカ文学史になくてはならない存在だったと言われています。
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 舞台は1920年代のニューヨーク。第一次世界大戦が終わり、野球、映画、ジャズといった大衆文化が広まり<ジャズ・エイジ>と呼ばれたこの時代。そこで活躍したのが「グレート・ギャツビー」のF・スコット・フィッツジェラルド、「老人と海」のヘミング・ウェイといった作家たちでした。そして彼らは共通するある伝説的な編集者によって才能を見い出され、世に出ています。それがコリン・ファース演じる編集者マックスウェル・パーキンズ。本作は彼が"天才"と惚れこんで支えた若手作家トマス・ウルフ(ジュード・ロウ)との交流に焦点を当てて描いた物語です。
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 トマス・ウルフはパーキンズと出会い、彼の元で手掛けた処女作「天使よ故郷を見よ」が評価され、一躍ベストセラー作家になっています。とは言え、ウルフの著作は日本では絶版になっていて、中古本もかなりの高値。そのため、フィッツジェラルドほかパーキンズがこの時代に世に送り出した作家たちと比べると知名度は低いというとても残念な状況があります。でも映画の冒頭、パーキンズの元に持ち込まれたウルフの分厚い手書き原稿を彼が一度読み始めるや否や、時間も忘れ没頭し、ついに読了した時のその表情たるや。二人が出会ってこれからどんな化学反応が起きていくのか、1つの才能という名の原石を見付けたパーキンズの高揚がこちらにも伝わり、その予感だけでゾクゾクします。

ウルフ自身、実際は2mもの長身の大男でその体格が表わすようにとても熱量の高い作家だったそう。本作の中でも内面から溢れるものをとにかくペンを通してぶつけないと気が済まないウルフの様が描かれていて、そんな彼が思いのまま感情をぶつけ過ぎて、若干収拾がつかなくなっている原稿をパーキンズが大胆にカットしたり、うまくまとめることでより洗練されたフレーズに変えていくシーンはパーキンズがまるで原稿に魔法をかけているかのよう。小説を書くことは単にウルフの個人的な作業なだけでなく、パーキンズという編集者との共同作業であったことも伝わり、パーキンズなしではウルフは存在しなかったかも、とさえ思わされます。
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(「本来は大男のウルフをパーキンズ演じるコリン・ファースと背格好が似たジュードが演じているが、これにより二人の関係性が対等であるようにもとれ、そう考えるとこのキャスティングはあり。」と論したのは本作の字幕協力者でありアメリカ文学研究者の柴田元幸さん。納得!)

パーキンズ自身は決して表舞台には出ないけれど、ウルフが小説にかける想いやパッションを一番良い形で世に出そう、という信念の元に行動する様は如何に彼がウルフの才能を信じ、ひいては文学そのものに惹かれ、どれだけ人生を捧げていたかも伝わります。それ故、時にパーキンズは自分のプライベートはないがしろになり、家族よりウルフの小説を第一優先にしてしまうことも・・・。編集者としては作家の気持ちを汲み、正しい判断が出来たパーキンズもこと家庭のことになると、全くもって省みることができなかった、というのは何とも切なくもあるのでした。
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 さて本作では文学に、信じた才能に全てを捧げたクールで知的なパーキンズ、方や才能を豪快にぶつけるウルフと対照的な人物が登場しますが、それぞれをコリン・ファースとジュード・ロウが演じたことでより魅力的な作品となりました。パーキンズのトレードマークと言われたソフト帽、仕立ての良いスーツとロングコートを纏うコリン・ファースはスクリーンで佇んでいるだけでうっとりですし、ヤンチャだけどどこか繊細で矛盾さをはらんだウルフをジュード・ロウが演じ、あの笑顔を振りまかれた日にゃ、なんか色々許しちゃいますよね。

 この映画を観終わると原題が「GENIUS」(天才と共に守り神の意味を持つ)というのもとても府に落ちる1本ですし、これまでとちょっと違った気持で本と向き合えるようになるかもしれません。本好きな方、そしてスーツ紳士好きな方に特にオススメです♪

By.M
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