『トイレのピエタ』

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 皆さん、こんにちは。女住人Mです。今週ご紹介する作品は公開初日に舞台挨拶も決定しました6/6公開の『トイレのピエタ』です。本作は漫画家の手塚治虫氏が病床で綴っていた日記の最後のページに残されていた文章にインスパイアされ作られた作品です。天才が生み出した、たった数行の短い文章から着想された映画とは・・・
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 突然ですが、人は何のために生きているんですかね。と言ってもこの問題に答えがあるのかもわかりませんし、運よくその答えを見い出せたとしてもそれが正解かどうかは誰もわかりません。普通に生きていると「何のために生きるのか?」なんて考えてもしょうがないから気にせずに生きていくのでしょうが・・・。でもそんな中で近しい人や自分自身が"死"と直面した時は誰しも立ち止まってその命題について考えるきっかけになります。

この映画の主人公・宏(野田洋次郎)はまさにそんな状況に陥ります。美大にいた頃はそれなりに才能も認められ、絵で食っていこうとも思っていましたが、気付けば夢は破れ、毎日窓を拭くバイト生活を送る日々。こんなハズじゃなかったという思いが爆発しないよう、何もなかったように何も考えないように生きています。それでも自分は何か出来る力はあるんだ、という変な自意識だけは人一倍強く、周囲を社会を冷めてみることで自分を保っている、ある意味愚かな若者です。そんな宏がある日突然、自分に残された余命がわずかであると知ります。自分に言い訳をしながら生きていた宏はもちろん、この事実をすんなり受け入れられる度量はありません。病院で相部屋になる隣の患者・横田(リリー・フランキー)がちょっかいをかけてくることにイライラしたり、慕ってくれる少年・拓人にも冷たい態度を取る始末。
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(宏を演じるのはロックバンドRADWIMPS(ヴォーカル&ギター)の野田洋次郎さん。
今回初演技とは思えない!映画の中の彼の佇まいは園田宏、それ以外何もないという存在で正直ビックリしました。)

 そんな時になぜか彼の側にいたのが女子高校生の真衣(杉咲花)。診断結果を聞くために病院に行った時に出会った少女は宏が癌であることを知ると「一緒に死のう」と言いだしたり、不機嫌になると「早く死んでしまえ」と言い放ちます。そんな感情をむき出しな彼女に宏はどんどん心囚われていきます。真衣自身は学校では友達と言える人もおらず、家に帰れば言葉乱暴な母親に痴呆を抱える祖母の面倒を一方的に押し付けられています。何も出来ない自分に苛立ち、そんな自分を誰も救ってくれない社会に苛立ち、時に何に苛立っているのかもよくわかっていない真衣。でも怒りの塊のような真衣が宏にとっては"生きている"、そんな生命の輝きに見えたのかもしれません。
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(真衣を演じるのは回鍋肉を頬張るCMでお馴染の杉咲花ちゃん。やり場のない気持ちにうまく向き合えない思春期の少女を演じた彼女がまた抜群に良い!)

真衣と出会ったことで、何のためにも生きていなかった宏は少しずつ損なわれていた感情を取り戻していきます。でも、彼の余命が限られている事実は変わらず"死"は確実に宏を飲みこんでいきます。そしてそんな宏が自分の"生"を取り戻すかのようにとった行動が"トイレの(天井に描く)ピエタ"なのです・・・
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 人はこの世に生を受けたその瞬間から"死"に向かっています。いろいろなものを得ながら一方で何かを失い、最終的には一番最初に得た"生"をも失くす、まるで死ぬために生きているかのようです。そう考えると生きることはとても虚しい。でもそんな状況でも宏や真衣のように、たとえ他人には無様に見えてもただ生きているだけで輝きを放つ存在になりうるのです。いつもは"生きている"そんな実感などなく毎日を過ごしているだけだけど、そんな一瞬、一瞬の中に何かが生まれる、変わる瞬間がある、そう思うだけでも死に向かっているだけのこの日常もそんなに悲観するものでもないかな・・・と思ったり・・・そんなことを感じるシーンがこの映画の中にいくつもありました。そして二人の出会いは恋愛と呼ぶにはちょっとぎこちなさを伴うものですが、二人だけが共有した感情はちょっと羨ましくもあるのでした。

By.M
ⓒ2015「トイレのピエタ」製作委員会

★『トイレのピエタ』初日舞台挨拶決定!!★ 
【登壇者】 (予定)
野田洋次郎さん/松永大司 監督
【開催日時】 6/6(土) 10:30~の上映回 (本編上映前開催)
【料金】 通常どおりとなります。
※特別興行のため、前売り券以外の各種割引制度、シネマイクスピアリ映画鑑賞券、無料券は全てご利用いただけません。
【チケット発売】
劇場窓口/オンラインチケット「Myシート・リザーブ」にて発売中!
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