『バケモノの子』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。連続でお届けしている夏のオススメ・アニメーションの第3弾は日本代表、7/11(土)から公開の『バケモノの子』をご紹介します。
 日本の夏の風物詩と言えばここ何年もジブリアニメだったのですが、"ポスト宮崎駿"という呼び声がどんどん高まり夏のアニメーションの新しい顔、と言えば細田守監督が手掛ける"細田アニメ"でしょう。「時をかける少女」、「サマーウォーズ」、「おおかみこどもの雨と雪」と生み出す作品は国内外問わず世界中の観客の心をつかんでいます。
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 そんな注目の細田監督の最新作は出会うはずのなかった人間の子供とバケモノが出会うことで始まります。母親を亡くした少年・蓮(声:宮崎あおい)は孤独を抱え渋谷の街をさまよっていた時に熊徹(声:役所広司)という名のバケモノに出会います。
蓮は強さを身につけるためにバケモノたちが住む"渋天街"に移り住み九太という名を与えられ、熊徹の仲間、百秋坊(声:リリー・フランキー)や多々良(声:大泉洋)に見守られながら熊徹の元で修業をしていきます。バケモノの世界を束ねる次の宗師候補の一人でありながらも熊徹は宗師になる条件の1つ、弟子を持たないこれまた天涯孤独の身。そんな熊徹の元で成長していく九太との子弟関係を描いていきます。

 細田アニメの魅力はいろいろ上げられると思いますが、私はやっぱり疾走感や登場人物たちの生き生きとした感じ、その躍動感に無条件でワクワクします。今回も映画の冒頭からワクワクMAX!いい映画は始まってすぐ「これはいける」と気持ちを高まらせてくれるものです。また本作を含め細田監督は身の周りで起きたことを題材に映画を作ることが多く、監督の想いがダイレクトに物語に反映され、メッセージもはっきりしている気がします。「おおかみこども~」では細田監督の周囲が出産ラッシュだったので「親になるってどういうことかな?」という所から物語が作られたのですが、その細田監督ご自身に息子さんが出来たことが『バケモノの子』を作る大きなきっかけになったそうです。「親子ってなんだろう?」、「大人は子供に何が出来るんだろう」。そんな細田監督の想いが本作でも真っ直ぐに表現されています。
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 主人公・熊徹はガサツで自分勝手で一人ぼっち。誰からも相手にして貰えなかったから何をするにも自分一人の力でやってきたし、誰も頼れないから一人で強くなるしかなかった。誰からもアドバイスを受けることもなく、我流で生きてきたので、突如現れた九太という子供に右往左往。
子供がどういう存在かがわからないし、九太自身も(子供なので)身勝手。九太も自身の境遇のため孤独を抱えているから、一人で踏ん張ることしか知らないし、誰を頼ることもしない、頼るということさえ知らない・・・。大人を信用していないくせに、大人な態度すら取れない熊徹を腹立たしいとさえ感じている。
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 でも二人は"孤独"だったからこそ身につけてしまった"勝気"な性格を持つ似た者同士。
だから反発し合っているんだよね、気心合えば一番の理解者になるだろうに、というのが手に取るようにわかる関係性。
そんな二人は熊徹の数少ない親友、百秋坊や多々良に助けられたりして互いに足りないことを補い、教えることで教わりながら、まさに理想の師弟関係を築いていきます。我らもいろいろな人と出会っていく中で、様々な局面で人生の師と仰ぎたくなるような人との出会いってありますよね。九太も熊徹だけでなく、いろんな人の影響の中で成長していきます。
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九太の成長を見ていると子供って勝手に一人で大人になっていく訳でなく、それは大人も一緒で、見守られているだけでもそれが支えとなって成長していくものなんだな、ということを改めて感じます。大人になると一人で何でも出来るように思えるから、一人で何かを手に入れているような錯覚を起こすけど、でも他者との出会いや繋がりがなければ世界はこれっぽっちも広がらないんだ、というのをこの映画を見て痛感・・・・日々の行動がお一人さま上手過ぎる私はちょっと反省したりもするのでした。

 物語は九太(声:染谷将太)が成長し、ひょんなことから人間の世界に戻り、彼が新たな世界を広げようとまた一歩を踏み出そうとするところから一気にテイストが変わっていきます。そこからは細田監督らしい"活劇"感溢れるこれまたワクワク展開なので是非スクリーンでお楽しみ下さい。

 そう言えば、以前このブログの中で「おおかみこども~」を取り上げた時も細田さんが描くテーマの根本にある"生きることの肯定"についてあげました。細田アニメでは生き辛い世の中でも生きていく上で「ありだ!」と肯定していける強さを主人公はいろいろな形で身につけていく気がします。息子さんが出来た細田監督はこれまで以上に、"人との繋がり"に特別な思いを込めながらこれからの子供たちの未来を肯定していく、そんな真っ直ぐな作品を作ってくれる気がします。既に次回作が楽しみ、楽しみ!

By.M
(C)2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS

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