『マジック・イン・ムーンライト』

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 花見の季節も終わり、早くポカポカした日が多くなってくれると良いですね。こんにちは、女住人Mです。今回は過ごしやすくなるこれからの季節に軽やかな気持ちで楽しめる1本、ウディ・アレン監督最新作4/11(土)公開『マジック・イン・ムーンライト』をご紹介します。
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 ウディ・アレン監督作と言えば前作はケイト・ブランシェット主演の「ブルージャスミン」。虚栄心に囚われ現実逃避する女性を描き、ケイトはアカデミー賞ほかこの年の主演女優賞を総なめにしました。あのギリギリGirlならぬ、ギリギリ悲痛妙齢女子を描いた作品の翌年に作られたのが軽やかでロマンティックな本作。1920年代の南仏を舞台に理論家で皮肉屋の天才マジシャン・スタンリーと明るく魅力的な女性占い師ソフィという相反する二人の恋のかけひきを描きます。
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 ウディ映画の中にはウディ・アレンの分身とも言える皮肉屋で理屈っぽい人間がよく登場しますが、今回はコリン・ファース(「英国王のスピーチ」ほか)演じるスタンリーがまさにその役回り。自身はマジシャンで夢を売る商売をしながらも、日常では一切イリュージョン的なものを信じない彼はスピリチュアル・パワーでもって霊視をする占い師ソフィ(エマ・ストーン)の正体を暴いてやろうと意気揚々。この論理的人間VS感覚的な人間という図式は我々の人間関係の中でもよく登場しますよね。相反する価値観を持つ者同士、特にこれが男女間となるとややこしくなりがちですが、良い方向に作用すると「自分の知らないこんな見方や世界があった!」という喜びになることがあるのは不思議ですね。

そして、全てのことにトリックはあるんだと疑ってかかるような男が、ソフィのパワーにすっかり翻弄され、説明不可能なことを信じ出し、それと同時にどんどんソフィに惹かれていく感じの滑稽さといったら。だって、あんなに皮肉屋でリアリストだった彼がソフィに心奪われていくとどんどんほわほわした男になっていくんです。日常で現実に起きることは理論立てて説明がつくものなのかもしれないけれど、恋の始まりは決してそうじゃない。「なんでこの人にこんなにも心惹かれる?」という気付きは本当に説明が出来ずに不可解ですね。
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 またスタンリーみたいに非科学的なものを否定していても、恋をするとあたかもそれを信じる人のように、相手を受け入れてしまう。この一種の皮肉めいた感じがウディ・アレンらしさでもあります。そして、恋の前では全くもって別の人格になっちゃうスタンリーは本当に可愛い。しかももともと理屈っぽい男だから、自分の気持ちに気付いてもソフィに素直な感じでないところもまた可愛い。それをコリン・ファースがやるからなお可愛い。相手役にコメディエンヌとしての才能に溢れるエマ・ストーンを持ってきているからさらにそれが引き立ちます。白い透き通る肌、大きなお目目、ちょっとハスキーな声、どれをとってもエマも可愛い!  mimsub2.jpg
(1920代を舞台にしている本作、エマの衣装も見どころです)

この映画を観ていると、我らが生きている日常は退屈で味気なく本質的には悲劇ではあるけれど、恋をすることで説明も出来ない感覚に人は陥り、喜劇が訪れる。恋の訪れこそが生きる上でのイリュージョン!!と今年79歳!のウディが我らに語りかけているような気さえします。

 実生活では恋愛絡みでいろいろいろいろあったウディがこの年になってなおそれを踏まえ、こんなロマンティックでマジカルな映画を作ってくれたということは、やっぱり恋をするということは楽しいことなんですね。春になったことですし皆さん、恋でもしてみますか!
なんつって。

By.M
Photo: Jack English © 2014 Gravier Productions, Inc.

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