『ジヌよさらば~かむろば村へ~』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。ここのところ、英国関連映画のご紹介続きましたので、今週は邦画をご紹介します。
"お金恐怖症"の男がジヌ=銭(ぜに)と決別して生きる姿を描くコメディ作品4/4(土)公開の『ジヌよさらば~かむろば村へ~』です。
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('ジヌ'とは東北地方の方言で'銭'、'お金'のことを指します)

 主人公の高見武晴=通称タケ(松田龍平)は銀行マンとして働いていた時のトラウマで現金に触るだけで失神してしまう"お金恐怖症"。 「1円もお金を使わない!」と心に決め田舎の小さな村"かむろば村"にやってきましたが、そんなに人生甘くなく、何度か生命の危機にさらされながらも村長の与三郎(阿部サダヲ)や与三郎の妻・亜希子(松たかこ)に助けて貰ってなんとか生活し始めます。タケの無知と無鉄砲さに呆れていた村の人々も次第とタケを受け入れていき、村での平和な生活が続きそうに思えたある日、不気味な男(松尾スズキ)の出現と迫りくる村長選挙を機にかむろば村に不穏な空気が漂い始めます。

 本作の監督・脚本は(劇団)大人計画主宰の松尾スズキさん。それもあって今回は大人計画の看板俳優・阿部サダヲさんがメインキャストの一人村長の与三郎を、その妻・亜希子を「夢売るふたり」以来の夫婦役、「アナ雪」の吹替でもお馴染の松たか子さんが演じます。
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 主演のタケを演じるは松尾スズキ監督作品「恋の門」から10年ぶりにタッグを組む松田龍平さん。松田さんは飄々とした佇まいの中にジワジワ面白みが滲み出ているタイプの方なので本作でもオドオドとした感じと真剣なのに、素っ頓狂なキャラがもうかなりいい塩梅です。もうこのメイン3人が揃っただけでガッツリです!という感じですが、加えて与三郎の経営するスーパーあまので働くパートさんに片桐はいりさんや、"かむろば村"の住人に荒川良々さんほかTVドラマや映画、お芝居といろんな所で活躍中のひと癖もふた癖もある大人計画所属俳優が揃い組!さらに過疎化が進んだ村の貴重な若者・青葉に二階堂ふみさん、そして村の"神様"に西田敏行さんと、もう脇まで固められまくった芸達者衆がこの小さな村に集まっていると思うだけでなんだか笑っちゃいます。
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 タケはお金にかかわりたくなくて"かむろば村"にやってくる訳ですが、田舎だからお金がかからない、ってことは全くなくて、田舎だからこそ手間もかかって不便でお金もかかる。田舎だから自給自足が出来るとタケは思っていますが、それは長年その地で住み、自然や田舎の厳しさを知っているからこそやれることですが、タケはヒートテックを重ね着すれば寒さはしのげるぐらいに思っている天然くん。

観ているこちらも最初はそんなタケにイライラしちゃうのですが(笑)タケ本人は至ってマジメだし、どこかほっておけない感じなので「しょうがないな~」と周りがなんだかんだで助けちゃう。田舎はそんな明け透けな関係性が築ける場所ではありますよね。ただその半面、閉鎖された社会だからこそ、いろんなことが筒抜けだったり、凄~くグレーな人間関係が暗黙の了解的に周知の事実だったり、誰もそれを見て見ぬふりをしていたり、そういう陰な傾向があります。
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(片桐はいりさんの本作におけるコメディエンヌっぷりも最高~♪)

 この映画はコメディなのですが、田舎のそういう嫌~な感じも笑いで全面的で描いている所がなんともミソなんです。凄く笑ってしまうけども、その笑っちゃう要素が人間の闇だったり、病みだったりして・・・そんなダーク要素もありつつ、タケを見ていると"一人で生きる"ということは一人で生きていけるように周りに支えて貰っていることなのか、とも思ったり。なかなか深い。深い。
 松尾スズキ監督が仕掛ける小ネタやくすぐりで始終爆笑しながら明るい!けどディープ!みたいな独特な世界観をご堪能ください!

By.M
©2015 いがらしみきお・小学館/『ジヌよさらば~かむろば村へ~』製作委員会

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