『ショート・ターム』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。
今回は今年に入ってとりあげてきた作品の中でもかなり気持ちが入っているそんな1本、11/15(土)公開の『ショート・ターム』をご紹介いたします。
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 物語の舞台は問題を抱えたティーンエイジャーをケアする短期保護施設“ショート・ターム”。ケアマネージャーのグレイス(ブリー・ラーソン)は少年少女たちの安全な生活を守るためにここで働いています。彼女には同僚でボーイフレンドのメイソン(ジョン・ギャラガー・Jr.)がいて一緒に生活もしているのですが、グレイスの妊娠により、状況が少し変化します。そんな折、“ショート・ターム”に15歳の少女ジェイデンが入所してきます。彼女の心の痛みを自分のことのように理解出来るグレイスですが、彼女自身、愛するメイソンにすら打ち明けることが出来ない傷を抱えていたのです。
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 本作は2013年のサウス・バイ・サウスウェスト映画祭でプレミア上映されて以降、世界中で30もの映画賞を受賞、今もなおクチコミで評判が広がっている作品です。その盛り上がり方は今年上半期日本で大ヒットした「チョコレートドーナツ」に似ています。誰もが知っているスターが出ている訳でもなく、有名監督がメガホンをとった訳でもない、低予算のインデペンデント映画。でもそんな作品でも世界中でクチコミが広がりこの映画を愛してやまない人たちがたくさんいる、映画を観た多くの人が「この映画をもっとたくさんの人に観てほしい」と願ってしまう。観た人の心を掴んで離さないそんな力を持つ“愛され系映画”が『ショート・ターム』なのです。

なぜそんなにもこの映画が愛されるのか・・・

 皆さんは映画を観ている時に登場人物にどんどん感情移入し、彼ら彼女らのことが頭から離れなくなることってありませんか?映画の中でもしその主人公たちが何か救いようのないトラブルに巻き込まれた時に「どうか助かって!どうか幸せになって!」と願って止まない時ってありませんか?フィクションの世界の住人がまるで自分の世界の一部の存在に感じてしまう。私がついつい肩入れしてしまう映画の多くはこういったタイプの作品です。そして本作はまさにそんな映画です。
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 この映画の主軸となって語られるケアマネージャーのグレイス。彼女は職場でも信頼され、同僚のメイソンと一緒に暮らし、何気ない日常を幸せに暮らしています。でも彼女は妊娠したことで情緒不安定になっていきます。メイソンはユーモアのセンスにも溢れ、我慢強く、優しく、これ以上ないボーイフレンドなのですが、彼女は中絶を決意しています。グレイスは彼を心から愛しているにも関わらずなぜそういう選択をしようとしているかの真意もメイソンに言えないでいます。そしてその秘密は時を同じくして入所してきたジェイデンとのやり取りの中で次第とわかっていきます。
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グレイスは“ショート・ターム”にいる子たちが過去経験した心と体の傷が決して繰り返されるものではないこと、みんなはきっと誰かに愛されるし、今でも充分愛される存在であることを押しつけることなく、媚びることもなく、子供たちに伝えようとします。あたかも自分に言い聞かせるように・・・。そう願い、そう信じているにも関わらず、それでも自分のこととなると殻に閉じこもってしまうグレイス・・・。「こんなにみんながあなたのことを頼り、愛する人に愛され、あなたが子供たちに願うように、あなたもそうなれるのに・・・」そう考えると本当に胸が締め付けられます。そしてそんな思いにさせられるのはグレイスだけでなく、この映画に出てくる登場人物たちのそれぞれの物語に「大丈夫、きっと大丈夫」と願う自分がいます。
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 人は何かから囚われるとそこから解き放たれることはとても困難です。それが幼い時期であればあるほど難しい。それでも人は何かのきっかけで、誰かとの出会いで、変わることが出来る、変えることが出来る。それを誰もが許されている存在であるし、そうでなければならない・・・。
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 この映画を観た後だと、ふとした瞬間「あ〜みんな元気にしてるかな〜。グレイスとメイソンはどうしてるかな〜」と思い出してしまいます。そんな風に思わせてくれる『ショート・ターム』が私は好きで好きでたまりません。

By.M
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