『グレート デイズ!−夢に挑んだ父と子−』

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 皆さんこんちは、女住人Mです。昨年フランス映画「最強のふたり」が大ヒットしたのも記憶に新しいところですが、フランスからまた素敵な映画が届きました!と言う訳で今回ご紹介するのは8/29(金)公開の『グレート デイズ!-夢に挑んだ父と子-』です。
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 本作は車いす生活を送る17歳の青年ジュリアン(ファビアン・エロー)が、障がいのある息子と父親が“アイアンマンレース”に出場した新聞記事を見つけ、自身も父親と一緒にチャレンジする、という実話を元にした物語です。
 “アイアンマンレース”とは トライアスロンのなかでももっとも過酷な耐久レースとして知られていて、通常のトライアスロンでは水泳1.5?`、自転車40?`、ランニング10?`に挑むのに対し、“アイアンマンレース”は水泳3.8?`、自転車180?`、ランニング42.195?`とまさに鉄人レース。「ランニングだけでフルマラソンじゃないか!」と運動オンチな私は聞いたそばから「ムリ、ムリ」と全面的降参な構えです。
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監督はパリ・オペラ座のバレリーナを追ったドキュメンタリー映画「エトワール」が日本でもヒットしたニルス・タヴェルニエ。ドキュメンタリー作品の製作で出会った障がいを持つ子供たちの生きるエネルギーに圧倒されて本作を企画したということもあって、車いすで日常を送るジュリアンがとても生き生きと描かれています。本作は周りの協力によって青年が父親とレースに挑戦するだけの話ではなく、青年自身が周りをどんどん変えていく、周りの人の成長も主軸となっていく・・・なんとも素敵な作品です。

 物語は主に父・息子の関係性がメインに語られますが、このお父さんがいわゆる“こじらせ”親父。自身がトライアスロン経験者だったという過去もあってか、ジュリアンの障がいを未だに受け入れられず、息子との対話を避け、自分の感情をどう表現して良いかわからなくなっています。その上、仕事まで無くし一家の主(あるじ)的なプライドも崩れるわ、母親に全てをまかせてるから家に居場所はないわ、その癖、父親としての威厳は持ちたいわ、妻クレールと衝突するわで、もうこじらせ具合はMAXなのです。
そんな中、妻クレールは仕事もして、家のこともして、ストレスMAX!感情こじらせ親父とストレスMAX母のもとでジュリアンも爆発しない訳がなく、父にもう一度夢を見ることを、自分と正面から向き合てくれることを、母に子離れしてくれることを‘アイアンマンレース’にチャレンジすることに託し、次の一歩を踏み出そうとします。ジュリアンが一番大人ですね・笑。
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(こじらせ親父ではありますが、イケメン親父。演じるはジャック・ガンブラン57歳!)

おそらくポールもクレールも最初は「息子の願いを叶えてあげたい」と思って、レースへの参加を許し、危険でハードなトレーニングをサポートし、レースの完走を祈り、共に乗り越えようとしたのだと思いますが、結果としてはジュリアンの行動が頑なな父と母の感情を解放させ、彼らにとっての新しい一歩までも踏み出させることになるのです。 
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この映画の主人公はたまたま障がいを持つ青年でしたが、こういう家庭環境って結構、どこでも垣間見られると思うんですよね。子供の成長は子供自身のそれだけでなく、結局のところは親の成長も大事なんだろうし、夫婦だから家族だからといって、何もかもが許される訳ではなく、夫婦や家族だからこそお互いを思いやる気持ちが必要だし、何か問題があった時に逃げているだけでは何も解決しないし、それは正面から向き合った時にだけ本当の意味の解決に繋がるし・・・なので特にスポーツ好きでなくても、特別な環境にいなくてもこの映画はいろいろな人の心に気付きを与えてくれると思います。

 スポーツものと言うこともあり清々しい風を運んでくれる本作は舞台が自然豊かなフランスのアヌシー地方。ドキュメンタリー監督でもあるタヴェルニエ監督ならではの切り口で、自然と人間のコントラストがとても絵になる1本でもあります。南フランス・ニースで開催されたレースで実際に撮影されたアイアンマンレースのスタートシーンは息も止まる程ににフォトジェニック!是非スクリーンでご堪能ください。

By.M
©2014 NORD-OUEST FILMS PATHÉ RHÔNE-ALPES CINÉMA

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