『チョコレートドーナツ』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。今週ご紹介する映画は都内で公開がスタートするやいなや初日から全回満席の大大大ヒット!そんな映画がシネマイクスピアリでもご覧になれますよ、5/17(土)から公開中の『チョコレートドーナツ』です。
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 舞台は1979年のカルフォルニア。シンガーを夢見ながらもショーパブで女装の口パクパフォーマンスをして日銭を稼ぐゲイのルディ(アラン・カミング)。正義を信じながらもゲイであることを隠し生活している弁護士のポール(ギャレット・ディラハント)、二人は出会ってすぐ惹かれあいます。そんな出会いがあった翌日、ルディはアパートで薬物中毒の母親に置き去りにされたダウン症のマルコ(アイザック・レイヴァ)とも出会います。一人部屋の片隅で母親を待つマルコを何とかしたいと思ったルディはポールに相談し、ほどなく彼の家でマルコの面倒をみるようになります。二人は深い愛情でマルコを育てようとしますが法と差別が二人の前に立ちはだかっていきます・・
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 本作は全米の映画祭の観客賞を総ナメにしたつまり、愛され系映画と言うこともあって、ここ日本でも公開から口コミがどんどん広がっています。言ってしまえばゲイのカップルがダウン症の少年と3人で家族になろうとするお話。つまりマイノリティの人たちの人生を描く物語なので多くの人たちが劇場に足を運ぶ映画か?と言われると必ずしもそうではないかもしれません。なのに何でこんなにもこの映画は愛されるのか・・・その理由はこの映画のシンプルさ故の強さにある気がしています。

 現代はいろいろな価値観が認められるようになった一方、その差別も根強く残っているのが事実です。となると、この映画の舞台である70年代がゲイの人たちにとってどれだけ生き辛い時代だったかは想像に難くありません。主人公のルディは部屋で佇むマルコを見てすぐに自分の部屋に連れて行き、出会ったばかりの弁護士ポールに相談の電話をかけます。自分の生活もやっとなのにルディは一人ぼっちになったマルコをためらいなく自分の部屋に迎え入れます。マルコに朝食を出そうとしても、冷蔵庫にはチーズぐらいしかないのに・・・。

この映画が表現する全体の空気感はルディのこの迷いない行動で全てをあらわしています。ルディの過去について何の説明もありませんが、この行動で観客はこれまでルディがどんなに辛い思いをし、今に至るのか、それ故に何も聞かずにマルコの全てを引き受け、すぐに行動に出る・・・そんなルディの行動の裏付けとして彼のこれまでの人生を全て感じとることができます。ただ目の前にいるこの子が一人だから、その痛みがわかるルディはそこに自分を重ねたのかもしれません。もちろん損得など全く関係なくマルコを受け入れるのです。ルディの潔さ、その根幹にあるルディの苦悩、だからこそ持ちうるルディの心の美しさが感じ取れただけで私はこの映画に心を奪われました。
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(タイトルの「チョコレートドーナツ」はマルコの大好物。)

 この後、物語は3人で幸せに過ごす日々が描かれます。どんな時代でもマイノリティである人たちの心を汲む人もいればそうでない人もいる。ポールは正義のために、世の中がもっと生きやすくなるように、転職して必死に勉強し弁護士になっています。それでもその思いが簡単に達成されることはないことも改めて知ることになります。そのままにしていたら社会から弾き飛ばされるであろうマルコを二人は必死に助けようともがきます。いつも寝る前にハッピーエンドの物語を聞かせてとねだるマルコに、彼の人生もハッピーエンドの物語で終わらせることが出来るように・・・・
そして、三人の物語はルディが歌うボブ・ディランの「I Shall be released」で幕を閉じます。全ての偏見から、差別から、それによる苦悩から、苦痛から解放される日を全ての人が手に入れられますように、そんなメッセージと共に。
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(トニー賞受賞経験のあるルディ役のアラン・カミングが歌うこのシーンは本当に圧巻)

 偏見によって生き辛くなってしまう我らの世界ですが、それがどんなに浅はかなことであるかこの映画は教えてくます。
是非、スクリーンでご覧下さい!

By.M
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