『アデル、ブルーは熱い色』

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 皆さんこんにちは。女住人Mです。春は出会いと別れの季節ですね。
今回ご紹介する作品も衝動的なある出会いから始まる愛の物語、4/5(土)公開の『アデル、ブルーは熱い色』です。
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 物語の主人公アデル(アデル・エグザルコプロス)は勉強もマジメにし、上級生トマに想いを寄せる、普通の高校生です。トマとは一瞬うまく行くのですが、何かしっくりこない自分の気持ちが気になり、すぐに別れてしまいます。そんなある日、道ですれ違っただけの髪をブルーに染めた女性に一瞬にして心奪われ・・・。偶然、再会を果たしたその女性は画家をめざす美大生エマ(レア・セドゥ)。
アデルは一途に彼女にのめり込んでいきます。
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(エマを演じたレア・セドゥちゃんは「ミッション:インポッシブル/ゴーストプロトコル」や「ミッドナイト・イン・パリ」などにも出演している現在28歳の売れっ子女優。おじいちゃんも親戚もフランスの大手映画会社の会長やCEOと言うセレブです。そんな彼女がこういったまさに体当たりな映画に出るあたり、さすがフランス女の肝は違いますね。)

 本作は2013年カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを審査員全員一致で受賞した作品で審査委員長だったスティーヴン・スピルバーグが「偉大な愛の映画、その一言に尽きる。」とも評した程です。
本作がカンヌ映画祭でパルムドールを受賞したのは愛を最も重要視する国、おフランスの関係者の心を突いたこと、それが女性同士の恋愛でありながらも、二人の激しいラブシーンをダイレクトに描いたこと、そしてそれを演じた女優の渾身の演技の3つが上げられると思います。特に劇中かなりの尺をとって描かれる二人のSEXシーンは激しく、そのショッキングな話題性が先行したのも事実です。でも、じゃあなぜパルムドールを受賞したのか、審査員の心を鷲づかみにするぐらいこの映画が受け入れられたか、例えアムールの国おフランスが日本よりも偏見がないとは言え、そういったものを飛びこえ支持されたか・・・と言うのはやっぱりこれが“愛”(そのもの)を描いた映画だからだと思うのです。

 初めて男の子と結ばれたもの「なんか違う」と別れを告げ、道ですれ違っただけの人に一目ぼれをする感覚的なアデル。街でたまたま見かけたその人を勇気を持って追いかけ、アピールをするアデル。受け入れられ周りにも公認の仲に・・・。時は流れ、それぞれ仕事にも就き、それぞれ違う世界が広がり始めると次第と関係性にホツレが出始め、一つ狂うと、全てが狂って行く・・・ちょっとした寂しさのために間違いを冒し、さらに亀裂が入る二人の関係。これは別にアデルが愛した人がエマと言う女性でなくとも、相手が男性だったとしてもこういう流れは恋愛によくあることです。
本作はそういうよくあることを、じっくりと丁寧に真っすぐ描いているため、どんな人にも起きている、起きうるリアルがどんどん浮き彫りになっていくのです。
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(アデル(左)を演じたアデル・エグザルコプロスちゃんはまだ20歳!この半開きの唇でこの役をゲット!)

 それが印象に残るシーンが劇中いくつかあり、そんな中でもアデルがエマと大喧嘩になり、一緒に住んでいた家をアデルが追い出され、泣き叫び途方にくれるシーンが印象的です。アデルは翌日、職場に行きその日の仕事は(浮かない表情ながらも)いつも通りこなします。そして一日が終わり、一人になった時に初めて感情をあらわにするのです。恋愛におけるある出来事が例え当事者にとって天変地異がひっくり変えるぐらいの事でもそれを普段の生活にまで引っ張る訳にはいかないのが、我らの日常です。

この時のアデルの心の揺れは「わかる、わかる」と多くの人が共感するのではないでしょうか?そういった表現の積み重ねが描かれる本作はまさに誰でも経験しうることを捕えているからこそ、多くの人の心に入りこんだのだと思うのです。結局、人間と人間の間に生まれる愛情の一つが恋愛なだけにアデルにとってそれがたまたまエマでエマにとってはアデルだっただけなのです。

 とは言え、かなり衝撃作であることも否めません。シネマイクスピアリでは珍しい、レイティングR18+です。でもこの映画で描かれていることは全くもって普遍的なことのように思えるのです。

By.M
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