インデペンデント系映画: 2016年5月アーカイブ

『さざなみ』

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 GWは皆さん如何お過ごしでしたか?こんにちは女住人Mです。GWは「ズートピア」を始め家族で楽しめるファミリー映画が大盛況でしたが、これからは大人な映画の公開が続きます。今回ご紹介するのは本年度アカデミー賞主演女優賞ノミネート、2015年のベルリン国際映画祭で銀熊賞(女優賞、男優賞)W受賞ほか数々の映画賞にも輝いた5/7(土)公開『さざなみ』です。
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 ケイト(シャーロット・ランプリング)とジェフ(トム・コートネイ)は週末に結婚45周年の記念パーティーを控えた老夫婦。しかしジェフの元に一通の手紙が届いたことから何かが狂い始めます。それはケイトと知り合う以前にジェフが付き合っていた恋人カチャの遺体がアルプスの氷河の中から発見された、という知らせ・・・。以降、平穏だった二人の生活に不協和音が生じ始めるのです。
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 冒頭は本当に穏やかな日常が描かれています。毎朝の日課なんでしょう、愛犬と散歩をするケイトはとても若々しく、おうちの中もセンスの良いものに溢れ、ジェフも妻に優しく、45年という結婚生活がとても素敵な時間の積み重ねだったんだろうな、と簡単に想像出来るぐらい、まさに"絵に描いたような幸せな日常"なんですよね。でもそこに届いた1通の手紙・・・。ケイトに説明する時にジェフはこう言うんです。「僕のカチャが見つかったんだ」と。"僕の(my)"ですよ、もうこの単語だけで「あちゃー」ですよ。

45年も連れ添い、5日後に45周年の結婚記念パーティーを控えているにも関わらず、この場に及んで"僕の"カチャが、ですよ。ケイトも最初の方は自分と結婚する前の女性のことだし、おまけに彼女はもう亡くなっているし、何よりこれまで45年という月日を共にしてきた想いというのもあるのですから、然程気にかける必要はないかな、と思うのです。ちょっと嫉妬してみたり、そんな妻に対してジェフはおどけることで平然を装ったりと、まぁまだまだそんなに波風立ってないな、という感じだったんです。
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が、旦那は急に温暖化に興味を示してみたり(これによりカチャの遺体は見つかっている)、妻に対して男を見せてみたり、眠る前には若い時の想い出を饒舌に語ってみせたりするのです。男性が浮気をすると女性はすぐ見抜いてしまう、とよく言いますが(男女別で行動の違いみたいなものを語るのはよくないとは思いますが・・・)まさにそんな感じで、この映画を観てるとジェフの行動はもう"胡散臭い"の何ものでもないのです。全ての行動が心ここにあらずで、「こういうのもまぁ可愛いな~」ぐらいで観ていても、どんどんジェフの心があの頃に戻っていくのが手に取るようにわかり「あかん、あかん、こりゃダメだわ。」と思ってしまいます。
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そして止せば良いのにケイトは名探偵よろしく、夫の過去に何があったのか知ろうとするのです。夜な夜な屋根裏部屋に行って何かを物色する夫。そんな夫がいない日に屋根裏部屋に上がってしまう、妻。夫も妻も止めときゃいいんですけど、そうはいかないんですよね。そして一通の手紙を発端に、彼を取り巻く全てのもに昔の女の存在が、気配が充満してしまうのです。

45年というとても重いハズの年月が、たった一瞬で、たった1つの出来事で変わってしまうことがあるのです。それは良きにつけ悪しきにつけ・・・それが人生と言うものなんですね。穏やかな水面に投げ込まれた1つの石がどんどん大きな波紋を生む。『さざなみ』はそんな映画です。

 エンディング、ケイトもジェフもいろいろな想いを抱えパーティーの当日を迎えます。そのラストカット、ケイトの感情は頂点を極めます。それを演じるシャーロット・ランプリングを是非、スクリーンでご覧下さい。
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(あかん、怒らしてはいけない人を怒らしてはあかん!)

 そして、本作は素晴らしい役者陣の演技もさることながら、様々な"音"がもう一人の主人公とも言えます。時計の音、風の音、波の音、そんな生活の一部の"音"が雄弁にケイトの心情を語る時があります。映画の冒頭から流れるある音も然り・・・
原題の「45years」も邦題の『さざなみ』もズシンとくる本作は暫定MYベストな1本、むちゃくちゃオススメです!!

By.M
(C)The Bureau Film Company Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2014

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