話題の新作映画: 2015年3月アーカイブ

『博士と彼女のセオリー』

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 皆さん、こんにちは女住人Mです。2週連続英国男子主演映画でお届けします。今週ご紹介するのは本年度アカデミー賞主演女優賞ほか4部門ノミネート、主演男優賞を受賞した3/13(金)からシネマイクスピアリにて公開中の『博士と彼女のセオリー』です。
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 ALS(筋委縮性側索硬化症)を患いながらも理論物理学者の立場から宇宙の起源の解明に挑み、現代宇宙論に多大な影響を与えたスティーヴン・ホーキング博士。しかしそんな彼の偉業がある女性によって支えられていたことはあまり知られていません。本作は1963年ケンブリッジ大学で出会ったのちの天才物理学者ホーキング(エディ・レッドメイン)とその妻ジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)の物語です。

前述した通り、本作の演技でホーキング博士を演じたエディ・レッドメインは本年度アカデミー賞主演男優賞を受賞しました。エディ・レッドメインが多くの人に知られるようになったのは2013年の大ヒット作「レ・ミゼラブル」で演じたマリウス役からだと思います。それまでも「美しすぎる母」、「マリリン 7日間の恋」といったアート系の映画にはよく出演していた彼ですが、「レミゼ」で歌い上げる彼を見た時、「この人、歌も歌えたのか・・・」と驚愕したのを覚えています。海外の役者さんは大抵が歌えるし、踊れるし、でもそれをひけらかす訳でなく、必要に応じてサラ~っと披露するところが本当に憎い。

そんなエディは英国一の名門校イートン校で学び、(その時の同級生がウィリアム王子)その後ケンブリッジ大学を卒業、お父さんは銀行の頭取という何とも超エリート!そんなエリートでありながらも役者をやっているのはイギリスにとって役者という職業にステイタスがあるからなんでしょうね。さすがシェイクスピアの国。と、話がズレてきましたが、徐々に肉体の自由を奪われていくホーキング博士を演じるエディの演技はそれを超越したものが感じられるほどに圧巻!オスカー主演男優賞受賞は誰も文句は言いますまい。バッチさんファンの私も納得です。
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 そんな圧倒的なエディの演技力が光る本作ではありますが、皆さんもよくご存知のホーキング博士のその超人的な天才ぷりよりもその人間性、特にホーキング夫妻の関係性に焦点が当てられているのがこの映画のポイント。そして本作で助演女優賞にノミネートされたフェリシティ・ジョーンズが演じる妻ジェーンの"覚悟"が印象的です。

スティーヴンの病を知りながらそれでも彼の人柄と才能に惚れこみ、結婚を決めた時。その後、二人の間に長男、長女と生まれる間にも彼の病状はますます進行していった時。そして体だけでなく、ついにはコミュニケーションの自由まで奪われ、文字ボードとまばたきでもって会話をしなくならなければなった時。そんなスティーヴンをサポートするナースが彼にとって特別な存在になったと感じた時。脆さはありながらも様々な場面で"覚悟"を決めるジェーンの潔さと逞しさ。それらを決断する程にどれだけ彼女がスティーヴンを尊敬し、愛していたか・・・ジェーンを演じるフェリシティーの「やってやるわ」的表情は時に神々しいほどです。
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(主演女優ノミテートを機に今後の活躍がさらに期待出来るフェリシティですが、「今日、キミに会えたら」、
「あなたとのキスまでの距離」といった過去の出演作もお薦めですよ。)

そしてたった一人ではスティーヴンとの生活を受け止められなかったジェーンの前に現れる一人の男性・ジョナサン(チャーリー・コックス)。スティーヴンの介護を買って出たジョナサンに心揺れてしまうジェーンに対し、彼女のために取ったスティーヴンの"覚悟"も彼自身がジェーンを心から愛していたからこその決断のように思えて仕方ありません。
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 この映画を観る前は、重度の病を患ったホーキング博士と彼を献身的に支える妻、そんな二人の物語ぐらいに思っていましたが、互いの存在を認め合った男女の"覚悟"が垣間見られるラブ・ストーリーだったことに、そして時に不思議なバランスで成り立っていた二人の関係性に意表を突かれる思いでした。

ホーキング博士自体とてもユーモアにあふれる方なので、やっぱり男は才能ある一芸と少々の小粋なトークが出来る人はモテるな~、なんて思ったりもしたのでした。

By.M
© UNIVERSAL PICTURES

 こんにちは、女住人Mです。今回は私の大好物バッチさんこと、ベネディクト・カンバーバッチさん主演、本年度アカデミー賞作品賞、主演男優賞ほか8部門ノミネート、そして脚色賞を受賞した、3/13(金)公開『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』をご紹介します。
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(マシュー・グードに「ダウントン・アビー」のアレン・リーチほか素敵な英国&アイルランド男子がバッチさんの脇を固めます。)

 本作はコンピューターの概念を創造し、コンピューターの父と言われるアラン・チューリングの物語。第二次世界大戦時、劣勢を強いられていた連合軍の勝機はエニグマによって暗号化されたドイツ軍攻撃の情報を入手することにかかっていました。つまりそれは暗号機エニグマを解読すること。精鋭チームの一人として天才数学者、アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)はこの暗号解読の機密作戦に参加するも、自信家でエキセントリックな性格が災いし、一人で解読マシンを作り始めたことで孤立していきます。そんな中、チームに加わったジョーン(キーラ・ナイトレイ)が彼の良き理解者となり、仲間との絆が生まれ始め、ついにはエニグマの暗号が攻略されるのですが、それは思わぬ悲劇に繋がっていきます。
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 物語の前半は類まれな才能を持ちながらも他者との交流を拒むチューリングの独特な人間性が描かれつつ、チームでエニグマを解読していく様がスリリングに描かれます。一秒でも一日でも早く解読することが出来れば一人でも多くの命が救えるのに一向に解読の兆しは見えない・・・。こういった時代背景の物語がお好きな方にはたまらないハラハラの展開が進みます。しかし本作がアカデミー賞脚色賞を受賞しているのはこのミステリー的な要素が巧みに描かれているからだけではありません。むしろ、エニグマ解読という偉業を成し遂げながらも、それにより数奇な運命をたどることになったチューリングの人生がきっちり描かれているからと言えます。
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チューリングが暗号を解読するために開発した機械は現在のコンピューターの基礎となっています。コンピューターなくしてはもう日常生活が送ることが出来なくなった我らにとってはチューリング様、様な訳ですが、そんな彼の存在を知っている人はどれだけいたでしょう。それもそのはず、彼の偉業や人生はチューリングが抱えていた秘密によって50年以上もイギリス政府によって隠匿されていたのです。彼が暗号を解読したおかげで助かった命が数えきれないほどあったにも関わらず、より多くの命を救う手段としての作戦を政府が隠したかったから、そして何よりチューリングのある秘密を当時の政府は許していなかったために彼は汚名を着せられ、ついには41歳という若さでこの世を去ってしまうのです。それは時代のせい、社会のせい、そんな言葉では片付けることが出来ないくらい、ただただ胸が締め付けられる仕打ちです。
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 そしてそんな悲痛なチューリングの人生がこんなにもダイレクトに胸に迫り、孤独だった彼の危うさが際立ち、こんなにも観る者の心を締めつけるのは、ベネディクト・カンバーバッチ、そうバッチさんが彼を演じたからこそなのです!!彼を一躍スターの座に押しやったシャーロックしかり、コミュニケーションを取るのが苦手だけど繊細でどこか儚げで脆い超天才を演じさせたら、もうバッチさんの右に出るものはいません。彼をシャーロックで見染めたあの夏から、きっと彼はオスカーの賞レースにも参戦するような世界的な俳優になるに違いないと踏んでいた私の目には狂いはなかった・・・悲運な人生を遂げたチューリングを入魂で演じるバッチさんをファンとして誇らしい気持ちです。
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(普段は天真爛漫な愛されキャラですが、一度俳優になると豹変する“モンスター”。
それがバッチさんです。今後もご贔屓に。)

と、バッチさんに興味がない方にはどうでもいい展開になってきましたが、とにかく暗号解読をめぐる背景に隠されたチューリングの切ない運命を知ると、憤りしかありません。
彼がなし得たこととは裏腹に彼の人生は壊れていくのですから・・
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 本作でアカデミー賞脚色賞を受賞したグレアム・ムーアさんは受賞スピーチで自身が16歳の頃に自殺未遂を経験していることを告白しました。「自分は変わった人間だと、周りに馴染めないと感じたから。でも、そんな自分がアカデミー賞の栄誉を手にすることが出来ました。この映画を、そういう子供たちに捧げたい。自分は変わっている、どこにも馴染めないと思っている人たちへ。君には居場所があります。変わったままで良いのです。」と。

 このスピーチを知った上で本作をご覧になると、脚本家グレアムさんがチューリングの人生に何を見たか、それが痛い程伝わってきます。チューリングの理解者として登場するジョーンは女性というだけで彼と同じように生き辛さを強要された人物として描かれます。同じ苦しみを持つからこそ、彼女には心を許したということがあったのかもしれません・・・。
最後まで孤独で社会からは疎外されていたもの、それでも心の底では誰よりもピュアな想いを持ち続け生きていたチューリングの人生。今の時代にチューリングが生きていたとして、彼が生きやすい世の中になっているのだろうか、それを考えるとまた悲しくもあるのでした。

By.M
(C)2014 BBP IMITATION, LLC

『おみおくりの作法』

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 こんにちは、女住人Mです。気付けば3月、別れそして旅立ちの季節ですね。
今回はそんな時期にぴったりな映画、3/7(土)公開の『おみおくりの作法』をご紹介します。
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 主人公はロンドン南部、ケニントン地区の公務員ジョン・メイ(エディ・マーサン)。ひとりきりで亡くなった人の葬儀を執り行うのが彼の仕事。本作は既に都内では上映していて大大ヒット中なので「観たいと思ってたんだ〜」という方も多いかもしれません。お待たせいたしました! もともと監督・脚本・製作をつとめたウベルト・パゾリーニさんが新聞に掲載されていた“親類縁者なく亡くなった人の葬儀を手配する民生係”の記事を読んだことから作られた物語で実際、ロンドンの各地区にはジョン・メイのような仕事をする人がいるそうです。高齢化社会と核家族が進む日本でもいわゆる、“孤独死”は社会問題にもなっているぐらいですから、これはよその国の物語どころではないですね。

そんな“孤独死”を迎えた人を最後にみおくるジョン・メイは公務員、独身、44歳というキーワードからとても想像しやすいキャラクター。決まった時間に起き、毎日同じような服を着て、同じようなものを毎日食べ、車が通らないとわかりきった通りでも必ず左右を確認する、彼の人生そのものがシンプルで整然としています。感情を露わにすることはなく、いつも控えめで、些細なことですら冒険することが苦手な彼はちょっと風変わりで孤独な人間に見えますが、決して彼自身が寂しい人とは描かれません。
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亡くなった人の身寄りを必死に探し、遺品をヒントにその人の宗派を探し当て、お葬式で流す音楽を決め、弔辞を書きおみおくりをする。ジョン・メイは一人で亡くなった人を憐れむようなことはなく、ただその人が生きていたこと、そして亡くなったこと、その人自身への敬いの気持ちをもっているからこそ、彼の真摯な行動は純粋に心を打たれます。なのに、丁寧過ぎる彼の仕事ぶりは上司からは評価されず解雇されてしまいます。この世知辛い世の中、それはそれでわからんでもないですが、「そりゃないよ〜」な出来事です。そして最後の仕事、向かいに住むビリーのおみおくりに着手するのです。向かいにずっと住んでいたはずのビリーという存在を全く知ることなく生活をしていたことに驚きながらも・・・
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(いつもやらないことも挑戦し始める、ジョン・メイはどこか可愛い。)

 これまでも丁寧に真心を込めて仕事をしていたジョン・メイですが、いつも以上に必死に彼の人生を辿ります。たった一人で死んでいったビリーだったけれども彼の人生は決して取るに足りないものなんかじゃなかったハズだ、どんな人の人生も尊いんだ、そんなジョンの確固たる心の叫びが聞こえてくるかのようです。そしてビリーの生きた証を刻もうとするかのようなジョンの行動は彼自身がひたむきにこれまでやってきたことへの自己肯定も含んでいるようにも思えてきます。一人ぼっちで死んでしまったビリーだったけれども、彼の生きていたことに意味が見出せることが出来たなら、自分の人生も肯定出来る、そんなジョンの切ない願いが・・・・

目立つこともなく、決して人が進んでやらないことを丁寧に実直にやり続けてきたこの男の人生が少しでも救われてほしい、報われてほしい、こんな人だからこそ人生に祝福されてほしい、次第とそう願わずにはいられなくなるのです。そしてそんな控えめだったジョンの人生が仄かに彩る兆しが見え始めます・・・・
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(孤独だったジョンと心を通わすようになるケリーを演じるは「ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館」のメイド長・アンナで
お馴染みジョアンヌ・フロガット!アンナは不運が続くだけにケリーはどうなの〜?)

 God in the Detail.(神は細部に宿る)。
ジョン・メイの人生は細部に真心を込めていたからこそ、彼の人生は豊かだった。
でも人生は時に残酷なことも起こりうる・・・・

 最後に個人的ではありますが、ジョン・メイを演じたエディ・マーサンは私の大変お気に入りの役者です。ただこれまでは、暴力をふるう男だったり、うだつの上がらない亭主だったり、意地悪な上司だったり、ちょっと気持ち悪い人だったりと脇役としてかなりキャラ立ちするタイプの俳優さんでして、本作を観ながらも私は「いつこの人は逆ギレして豹変するんだ」と別の意味でちょっとハラハラしていました(笑)でもそんな彼が本作では初めて主役、しかもこんなに素敵な役を演じたのでちょっと感無量!私にはどんな役でも真摯に向かいあうマーサンとジョン・メイの生き様が重なって見えたのです。LOVE・マーサン!!
そんなマーサンによる、マーサンのための、マーサン映画を是非スクリーンでご堪能ください。

By.M
© Exponential (Still Life) Limited 2012

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