シネマイクスピアリ: 2012年7月アーカイブ

『キャタピラー』

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恐らく2年前の春だと思います。シネマイクスピアリのトークライブ「おすぎのシネマトーク」で、「ここでは上映しないと思うけど・・・」というような前置きをしつつ、おすぎさんが観たばかりのある作品について熱く語ってくださいました。その時、劇場の片隅で「待ってました!」と大喜びしていた僕。こんにちは、自称“しのぶマニア”の男住人Aです(『ロボジー』の記事をご参照のほど)。今回、ついにその作品『キャタピラー』を上映できることになりました。

そもそも僕にとってこの作品は、まさに奇跡の一作でした。映画デビュー前から出演舞台を見続けていた大ファンの寺島しのぶと、これまた大好きな若松孝二監督の初コラボ。製作のニュースを目にした時から、完成をずっと心待ちにしていました。そして、運良くチケットが買えた映画祭のイベントでようやく初対面した『キャタピラー』は・・・それはそれは衝撃でした。手足を失って帰還した傷痍軍人と、その男を軍神として世話する妻の姿を通じて戦争の愚かさを描くというストーリーは、それだけでもインパクト十分。

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(実は『赤目四十八瀧心中未遂』でも共演しているおふたりです。)

しかし、まぁ何よりものすごい迫力なのが主演の寺島しのぶ!このブログの少し前の『ヘルタースケルター』の記事では女住人Mも太鼓判を押している寺島しのぶ!! ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞までも獲ってしまった寺島しのぶ!!! 今回の役は実力派と言われるこの人にとってまさに真骨頂のハマり役だと、長年のファン代表として断言します。通常映画を観るとつい“感想”を語りたくなるものですが、この作品の場合は何というか、感情がドンドンあふれてきて、客観的に感想など言っていられなくなります。きっとそれは、寺島しのぶだからこそ、彼女の役を生きる力があってこそ、為せるワザなのでしょう。

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(お母さんは「3時のあなた」の富司純子さん。本名は「寺島グナシア忍」だよ。)

そしてもう一人、この映画を語るうえで外せないのが、若松孝二監督。僕にとってこの人は孤高で、アウトローなカッコ良さを備えた人。そして自分のメッセージを正々堂々と、力強く発信する人。今年に入ってもすでに2本の新作映画が公開されているほか、『キャタピラー』の2年前には『実録連合赤軍 あさま山荘への道程』(こちらも大傑作!)もとても話題になりました。大島渚監督の『愛のコリーダ』をプロデュースしたのも、名古屋で有名なミニシアター「シネマスコーレ」を経営したのも若松監督です。私ごとではありますが、今回そんな憧れの若松プロダクションさんの作品を上映することができて、嬉しくてなりません。

最近、映画の宣伝でよく「自分事化」ということが言われます。つまり、観る人それぞれがその映画をどれだけ自分に引き寄せて解釈し、興味を持ってもらえるか、そして「これは自分のための、自分が観るべき映画なんだ」と感じてもらえるか、映画宣伝はその手助けをするのだ、といった趣旨の言葉です。それが間違っているとは思いませんが、しかし僕個人は、そんなに容易に自分の身近に引き寄せられるような映画はちょっと退屈に感じます。僕が映画に求めるのは、自分の日常では想像も付かない世界観だったり、理解できないような巨大な感情だったり、とにかくもっと内的スケールの大きなものです。この『キャタピラー』にはそういう意味での“大きさ”や“強度”のようなものがたしかにあると、僕には思えます。しかもそれをささやかな田舎の景色を舞台に、夫婦という小さな単位で描ききってしまうところが、またスゴイのです。皆さんはどう感じるでしょうか。

そんなこんなで、<キネマイクスピアリ〜舞浜で名画を〜>シリーズの8月作品として登場する『キャタピラー』は、8/4(土)〜10(金)までの一週間限定上映です。夕方の上映時間もあります!お見逃しなく!

By.A

© 若松プロダクション

『おおかみこどもの雨と雪』

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 夏になると「時をかける少女」を見たくなる女住人Mです。
今回ご紹介するのは今や日本ならず世界でも注目を浴びているアニメーション映画監督・細田守さんの最新作、7/21(土)より公開中の『おおかみこどもの雨と雪』です。
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 物語は主人公の花(声の出演:宮?アあおい)が“おおかみおとこ”(声の出演:大沢たかお)と出会い「恋愛、結婚、出産、育児」を経験して成長する姿と人間とおおかみの二つの顔をもつ“おおかみこども”の姉弟・雨と雪が成長し、自分の生きる道を見つける「自立の過程」を描きます。
結婚、出産、育児と残念ながらどれも未経験な私ですが、相変わらず疾走感、躍動感に溢れる本作にやられまくりました・・・。「時かけ」「サマーウォーズ」をご覧になっている方なら賛同して頂けると思うのですが、細田さんの絵にはこの躍動感を猛烈に感じさせるシーンが毎回登場し、その表現力に圧倒されます。私はアニメのテクニックや手法については全く知識がないのですが、そんな無知な私でも、説明抜きに感動してしまうこの絵、このシーンは何なんだ!と毎回たまげています。これはきっと普遍的な何かが心を動かしているんだと思うのです。
細田作品は言葉では説明出来ないけど凄いことだけがすご〜くわかるんです。本作でも細田印の多幸感に溢れ、そのほとばしる生命力を表現したシーンが満載です!こんな私が感動に打ちひしがれているので、きっと結婚、出産、育児、どれかを経験している方が見たらとんでもないんじゃないんでしょうか。
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(雨ちゃんも雪ちゃんも、子供らしい子供で可愛い〜の〜)

 そして、もう1つのテーマ、子供の成長は誰しもが通って来た道。雨と雪は男女の違い、姉、弟という立場の違い、性格の違いで全く違う成長の過程を通ります。“おおかみこども”と言う非現実的な存在の二人が成長することでぶち当たる選択の1つ1つは我らがこれまでしてきた選択と何ら変わるものではなく、そういったものを選んで、決めて、行動することがすなわち成長、そして自立することなんだ、と気付かされます。“おおかみこども”である雨と雪の選択、そして二人の生き方を認めようとする花の選択。生き辛くなった今の時代は思いのままに何かを選ぶことが難しいのかもしれません。この映画のように物事はそううまくは進んでいかないかもしれません。それでも選ぶこと、決めること、行動することを重ねて、生きていくことを諦めない自分でいたいと思ったのでした。
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細田さんの作品には“生きることを肯定”している強さを感じます。生きることの辛さ、難しさの嘆きから生まれる生命の強さではなく、もともと生命がもつパワーを信じ、それを全面的に肯定することで逞しく生きる。どうせ同じ時間を生きるのなら、出来るだけいろんなものを「ありだね!」と肯定して生きたい私は本作でまたまた細田作品の大ファンになりました!
 シネマイクスピアリでは8/12(日)に細田監督のティーチイン付き上映会も決定しましたので、詳細は劇場HPで引き続き、ご確認下さい!
By.M
(c)「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

『メリダとおそろしの森』

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 ディズニー/ピクサー映画では「トイ・ストーリー」シリーズが大好きな女住人Mです。
今回ご紹介するのはディズニー/ピクサー最新作『メリダとおそろしの森』です。
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 ディズニー映画では、主人公が女の子と言うのはお手の物ですが、ディズニー/ピクサーとしては初めてのヒロインもの、カーリーな赤毛がとても可愛いメリダが本作の主人公。スコットランドのある王国の王女メリダちゃんは度胸があって王国一の弓の使い手。愛馬アンガスと森の中を駆け巡り、王女らしからぬその振る舞いで母親のエリノア妃をいつも困らせていました。普段は仲良しの二人ですが、娘の将来を案じるエリノア妃が伝統にのっとった結婚をメリダちゃんにさせようとしたため、「結婚なんてまだまだよ」と思っているメリダちゃんと口論に・・・「お母様のバカ、バカ〜」とアンガスに乗ってお城を飛び出したメリダちゃんは森の奥深くに辿りつきます。そこで導かれるように出会った<森の魔女>の魔法を手に入れ、エリノア妃を熊に変えてしまったメリダちゃん。「こんなハズじゃなかったの〜」となんとか魔法を解きたいメリダちゃんの奮闘が始まります。

 ディズニー映画のヒロインも最近では、ラプンツェルのように自分の運命は自分で切り開く系のお姫様が増えてきましたが、ディズニー/ピクサー初のヒロインも幸せは自分でつかむぞ!的イマドキなキャラクター。そんな女の子がしきたりや伝統が一番慮られる王家で伸び伸びと過ごせる訳はなく、案の定、王家の決まりの中で暮らしてきたお母さん、エリノア妃とは意見が食い違います。
なりたい自分と求められている自分に悩むと言うメリダちゃんの心情は何も王家の人間でなくても、年頃の女の子、いえ男の子でもよくあることです。大人になる過程では特にそういった葛藤は誰しも経験しますよね。私も小学生ぐらいの頃からそういった事でよく母親に反発していたものです。親としては子供のことを思っていろいろ言ってくれるんだ、と大人になった今ならわかっても、子供の時分にはそこまで汲み取る事も出来ず・・・そして大人になった今は今で親にわ〜わ〜言われると「うっせーよー。こちとら一人でいろいろ決めたいんじゃ〜」となってしまい・・・いくつになっても親子関係と言うは難しいものです。(えっ?素直じゃないのは私だけ!?)

まぁ自分の思う通りに生きると言うことは自分できっちり責任を取らねば、と言うことでメリダちゃんもお母さんにかけてしまった魔法を解こうとする過程の中で、どんな行動にも責任が伴う事を学び(「スパイダーマン」か!?)、そしてお母さんはお母さんで娘が大人になっていく過程の中では、自分が万能の存在ではないし、子供は子供で経験を積んでいき、それが最良な時もあることを知るのでした。

 さて、ディズニー/ピクサーの映画と言えば、本編の前に付いている短編上映のクオリティの高さにもいつも驚かされますが、今回はみんな大好き「トイ・ストーリー」再び『ニセものバズがやって来た』と、本年度アカデミー賞短編アニメーション賞にノミネートされた『月と少年』が付いている豪華2本立て!そちらもお楽しみに★
『メリダとおそろしの森』は7/21(土)から3D&2Dにてシネマイクスピアリにて公開です。
By.M
(C)2012 Disney/Pixar

『ヘルタースケルター』

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 写真を撮るのが大好きな女住人Mです。
今回ご紹介するのは写真家であり映画監督の蜷川実花さん2本目の長編映画『ヘルタースケルター』です。
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 主人公は完璧なスタイル、美貌を持ち、日本中の若い女性から羨望の眼差しを一身に受けているトップスター・りりこ。そんな彼女の身体は全身整形によって作られたもの。その美しさで芸能界の頂点に立ってはいますが、度重なる美容整形の後遺症で心も身体も危うい状態になっています。そんな時に美しく若い後輩モデルこずえ(水原希子)が登場し、ますます精神の均衡が崩れていくりりこ・・・・と女性ならではの地獄絵図がセンセーショナルに展開する本作。
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(“美”とは?“若さ”とは?欲望渦巻くモデル世界の申し子のようなこずえと言う存在がまた恐ろしい。そして可愛い過ぎるぜっ・・・)

 印象に残るのはやっぱり沢尻さんの演技。“お騒がせ女優”と言うレッテルを貼られてはいますがまだ26歳。このまま埋もれていく訳にはいかない彼女の「スキャンダル?スクープ?なんぼのもんじゃ〜」と言う叫びが聞こえてきそうな入魂演技。しかも彼女が演じるりりこはマスコミから世間から「可愛い、綺麗」ともてはやされ、チヤホヤされ、一方スキャンダラスなネタが露呈すれば、一気に方向転換して叩かれる。まさに沢尻さんの歩んでいる人生そのもの。商品としてのりりこは消費されるだけであり、それは今の彼女と何ら変わらない。りりこは自分の風貌が衰えてしまうことに過剰なまでの恐怖心を抱き、子供がおもちゃに飽きるよう、世間も自分に飽き忘れられる日が来る、それに怯え続けている。沢尻さん自身、自分が“若さ”、“美しさ”の象徴としての商品で、それはあかの他人の一過性の好奇心と言う所でしか成り立っていないことをわかっている。
無神経で無責任な世間に対して吠えまくるりりこと沢尻さんが重ならない訳がない。自分がどう見られるかも全て計算づくでりりこを演じているとしか思えない彼女にただ天晴れとしか言いようがありません。

沢尻さんは本作の演技に陶酔し過ぎて困憊し、事前の上映会の舞台挨拶にも顔を出していません。それぐらい彼女の入魂な本作が話題性優先だっとしても、怖いもの見たさでも興味本位でも構いません、一見の価値ありです。
そして沢尻さんだけでなく、りりこにやられ放題のマネージャー羽田を演じた寺島しのぶさんの演技がまたさらにインパクト大で、本作に限らずこれまでも凄まじい役を数々こなしている彼女からすると「沢尻エリカ、まだまだね」とか思っていてほしいぐらいです。
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(一番の女優はやはり寺島しのぶなのであった)

 このウラブログで「意外と女性の友情はありだよ」と言い続けてきた私ですが、こういう映画に出会うと「やっぱり女、怖い〜」と思っちゃいます。
『ヘルタースケルター』は7/14(土)からの公開です。
By.M

(C)2012映画『ヘルタースケルター』製作委員会

『崖っぷちの男』

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 人生ギリギリGirl(ガールと言う年齢でもないですが・・)な私、女住人Mが今週ご紹介する映画は
ギリギリと言うところで共感度100%の『崖っぷちの男』です。
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 舞台はNYの高級ホテルの高層階。部屋の窓を開け、地上60メートル、幅たった30?pの縁に立つ男(サム・ワーシントン)は今まさに飛び降り自殺をしようとしています。彼は自分の身元も明かさず、なぜ自殺しようとしているのかも明かさず、ただ交渉人として女性刑事リディア(エリザベス・バンクス)を呼ぶことだけ要求します。しかし彼はある事件で投獄され、脱獄した元警官だったことがわかります。彼の名前はニック・キャシディ、まさに人生の崖っぷちに立っている男。でも彼がこんな無謀な行動を取るにはある本当の理由が・・・う〜ん、大ドンデンの香り。

 本作は高所恐怖症ながらも実際にNYの高層ホテルの壁面、地上60メートルでの撮影にも挑んだサム・ワーシントンの「本当に怖いっす」な演技を筆頭に、テンポ良くスリリングに物語が進行していく所が見所。
高層ホテルの崖っぷちならぬ壁っぷちでニックが「わ〜わ〜」言い、何やら怪しげな行動を取りつつ、途中からニックの協力者である弟のジョーイとその恋人がある企てを向かいのビルで繰り広げると言う基本、2か所限定での展開。なので脚本が肝な映画な訳で、ストーリーはグイグイ行きますよ〜。
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(お色気要員もスタンバイ!)

正直「ホテル高層階の窓はそもそも開きませんよ」とか最終的には「ニック、いろんな人に迷惑をかけ過ぎだろう」とツッコミを入れたくはなりますが、そんな所を差し引いても骨太で緊張&緊迫感ありまくりの上映時間1時間42分でもうハラハラドキドキです。
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(おまわりさん、道連れ〜)

 ジメ〜っとした夏を迎えるこの時期にスカっと1本、映画は如何ですか?
『崖っぷちの男』は7/7(土)よりシネマイクスピアリで公開します!
By.M
(C)2011 Summit Entertainment,LLC.All Rights Reserved.

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