インデペンデント系映画: 2012年5月アーカイブ

『ドライヴ』

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 みなさん、こんにちは。三度の飯よりゴズリング、そんな心境の女住人Mです。
今回ご紹介する映画は天才的なドライバーテクニックを持ったある男の物語、『ドライヴ』です。
maindrive.jpgのサムネール画像

と言っても走り屋のカーアクション映画ではありません。昼はカースタントマン、夜は強盗の逃走を請け負う逃がし屋“ドライバー”が主人公で「君を読む物語」や「ブルーバレンタイン」でお馴染みのライアン・ゴズリングが演じます。
「5分間は何があっても待つ。でも5分過ぎると面倒はみない。銃やナイフは持たない、俺がやるのはドライヴ(運転)のみだ」、それが彼の流儀です。彼が何者かでどういう素情なのかは一切語られず、たった一人で生きてきた感がプンプンする孤高の男として描かれます。
そんな孤独な男がある日、同じアパートのアイリーン(キャリー・マリガン)と出会い、惹かれ合っていきます。でもアイリーンには子供もいれば服役中の旦那がいたのです。なので二人はただ見つめ合い、微笑みを返し、心を通わすだけの純愛一直線な時間を過ごすのです。子供もドライバーになついちゃって、良い感じ〜と思っていたら旦那が出所。ドライバーは身を引こうとするのですが、マフィアから借りた旦那の借金のせいでアイリーンや子供の命さえも狙われることとなり、ドライバーの純愛は狂気へと変貌します。

 この映画、ストーリーはシンプルなのですが、ドライバーがアイリーンの側でただ見守るだけの存在だったのが、いざ愛する人に危険が及ぶとなるとそれまで閉じ込めていた暴力性を一気に噴出させてしまうあたりから「どんな展開なんだ〜!!」と、そのアンバランス感は強烈です。ムーディーにほわわん♪としていたかと思うと、その空気を一気にぶち壊すR15+指定お墨付きのバイオレンスシーンが繰り広げられますからね。映画の中でも、狂気に豹変したドライバーにアイリーンはドン引きするのですが、見ているこっちもドン引きですよ。「え?今、何があった?」と放心状態になります。でも、そう言ったのを含めてもうとにかくこの映画は猛烈にカッコイイんです!
ドライバー役のゴズリングは寡黙な男なのでアイリーンに対してはほとんど微笑みや眼差しで会話するんですけど秘める狂気は背中で語っちゃう感じです。
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(ロマンティク暴走中!!〜か〜ら〜の〜)
アイリーン役のキャリー・マリガンも服役中の旦那がいるという、そういう危険な男を選ぶ女性でありながら何ですか、あのうぶな感じは!あの女子力は女性誌で特集組むべきですね。おまけに音楽使いが、いちいちかっちょ良くて、もうたまらんとです。

 本作は物語と映像、そして音楽のバランスやその使い方が本当かっちょ良くて、“この野郎!面白いじゃないか!!”(By.ローリング ストーン誌)と思わず言っちゃいますね。
そして、シネマイクスピアリではその魅力を引きたてるべく本作を大音量上映でお届け致します!是非、映画館でしか味わえない体験をシネマイクスピアリで体感して下さい★
『ドライヴ』は5/26(土)からシネマイクスピアリにて公開です。

By.M
(C)2011 Drive Film Holdings,LCC.All rights reserved.

『ル・アーヴルの靴みがき』

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 北欧なシャレオツ・デザインが大好きな女住人Mです。
北欧の都市・フィンランドと言えば、ムーミン、モダン家具、食器などが有名ですが映画の世界だと彼しかいない、そうフィンランドを代表する監督と言えば“アキ・カウリスマキ”、と言うことで今回ご紹介するのは彼の新作『ル・アーヴルの靴みがき』です。
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(地味な僕ら夫婦が主人公だよ)

 フィンランドと遠い国のご出身、カウリスマキ監督ですが、彼の作品の多くは日本でも公開されています。不遇な境遇の中でも地に足をつけて、逞しく、でもひそやかに生きる人たちがいつも登場。そんな市井の人々の姿をマッチで温かい明かりを灯すように描き、その温かは何だか日本人の心にマッチすると言うか、彼の世界観はどこか日本的でさえある気もします。だから日本でもカウリスマキ作品のファンが多いのかな〜?

 今回の舞台はフランス、ル・アーヴルの港町。靴みがきを生業としているマルセルは奥さんのアルレッティと愛犬ライカとつつましく生活しています。近所づきあいやいつも行くカフェで会う人々とのささやかな触れ合いも彼の至福のひと時。が、ある日アルレッティが病に倒れ入院し、それと入れ替わるように難民の少年イドリッサをかくまうことになります。波風のない平穏な生活を送っていたマルセルの人生は少年との出会いでさざ波が起きます。
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(右:警視モネ「難民をかくまってたりしてないよな。」左:マルセル「えっ!?」)

 難民の少年とそれを助ける男の話、と書くと何だか小難しそうな気がしますが、一切それはありません。カウリスマキ監督の描く世界は決して多くを語らないのにいつも温かさに溢れています。でも何だかデタラメな所もあってそこが憎めない。それはカウリスマキ監督そのものの人間性とも一致しているようです。

 この映画に出てくる人々は皆、質素だけれど、殺伐感は全くなく、お互いがお互いを支え、生きています。金払いの悪いマルセルに呆れ顔のご近所さんは奥さんのアルレッティが倒れたことを知ると、一番の理解者となって手を差し伸べるし、マルセル自身、何の関係もないイドリッサを母の元に届けるために奮闘します。マルセルが困っているならと、行きつけのカフェの女主人や常連客、靴みがき仲間までもが悪戦苦闘。難民のイドリッサを追う警視モネですら、人情を持ち続ける人として描かれます。
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(「靴みがきってこうやってやるんだぞ」)
日々の生活はいろいろあるけれど、良き心を持つ人たちが諦めずに、でも横暴になることなくささやかに闘う姿が何とも胸に沁みるのです。そしてみんながそれぞれを思いやって生きている、それはフランスのスローガン「博愛」そのものなのです。

“心をみがけば、奇跡はおこる”この映画のキャッチフレーズを信じたくなる『ル・アーヴルの靴みがき』は5/12(土)よりシネマイクスピアリにて公開します。

By.M
©Sputnik Oy
photographer: Marja-Leena Hukkanen

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