ウラシネマイクスピアリブログ

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『ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命~』

 皆さんこんにちは、女住人Mです。ここ数年、“ヒトラー”とタイトルが付く映画やそれにまつわる映画の公開がとても増えています。それはいろんな理由が挙げられると思いますが昨今、差別感情や行き過ぎた民族意識の高まりからトラブルや紛争が多発している、だからこそ過去の過ちを今一度知り、繰り返さないため、という動きもあるのかもしれません。今回は12/15(金)公開『ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命~』をご紹介します。

 ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発した頃。ワルシャワで動物園を営んでいたヤン(ヨハン・ヘルデンブルグ)とアントニーナ(ジェシカ・チャステイン)夫妻はユダヤ人が次々とゲットー(ユダヤ人強制居住区)へ連行され迫害を受けるようになったことに憤り、ナチスに追われたユダヤの人々を匿い、命を救うことを決意します。これは民間人の夫婦が自分たちの危険も顧みずに300人もの命を救った実話の映画化です。

 これまでもユダヤの人々を迫害から救ったとしてオスカー・シンドラー、杉原千畝とその偉業は映画化されてきましたが、それらを観る度に、自分がそういうことが出来る立場にいたら何か出来ただろうか、と考えさせられます。特にこの夫婦は普通の暮らしを送っていた普通の人たちなので、そんな思いがより強くなります。

 映画の冒頭、自分の息子はもちろん、どの動物たちにも分け隔てなく愛情を注ぐアントニーナの姿は本当に心が温まります。でも戦争が勃発し、家族同然だった動物たちは撃ち殺され、貴重種だけドイツ軍が没収していくのです。(ユダヤ人を迫害するナチスが貴重種の動物は救済する、それがまた気味悪い・・)

ドイツ兵士によって動物が目の前で殺され、何も出来ない自分たちを責める二人。一方で弾圧されるユダヤ人が増えるのを見るにつけ、自分たちには何か出来ないのか?どうにかしたい、そんな思いを強くしていくのです。「すべての命は等しく、すべての命は守られるべきもの」というアントニーナの言葉に裏付けられるかのように・・・

そこでヤンが思いついたのは動物園を養豚場として機能させ、園の地下をユダヤ人の隠れ家にすることでした。孤児院を運営する(医者、児童文学者としても有名な)コルチャック先生の助けも借りてゲットーからある手段でもって、ユダヤ人たちを動物園の地下へと運び出すのです。でも園内にはドイツ兵がたくさん出入りしているため、いつそれがばれるとも限らない。そんな緊張感の中でヤンは地下活動で家を不在にすることが続き、アントニーナは息子とたった二人で人々を匿わなければならくなります。彼女の不安、負担はどんどん大きくなる上にヤンと心がすれ違う出来事も起き、それに悲しみ、それでも一人でも多くの命を救おうとするのです。

 そんな信念を貫く心と愛情深い優しい心を持つアントニーナを演じたのは『ゼロ・ダーク・サーティ』、『インターステラー』ほか出演作が続くジェシカ・チャステイン。人間らしい弱さを抱えながらも芯の強い女性を演じると彼女の右に出る者はいません(私調べ)。そういった意味でもこの役は彼女が演じたからこそより魅力的になっています。

ハリウッドでも女性は年を重ねていくと演じる役が減るとも言われていますが、そんな中で彼女の活躍は目覚ましく、本作ではプロデューサーも兼ねていますし、自身をしっかりもって発言するジェシカ・チャステインの存在はこれからもっと注目を浴びるようになると思うので彼女の出演作は今後も要注目!

 命を守る場所である動物園が舞台だからこそ、動物も人間も、またどんな人種でも国籍でも性別でもそこに優劣はない、等しく生きる権利がある、そんな当然のことを改めて痛感させられる、まさに今観るべき1本なのです。

By.M