ウラシネマイクスピアリブログ

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『レディ・バード』

 夏休みは大作揃いですが、その合間を縫ってインデペンデント映画も上映中!今回は本年度アカデミー賞主要5部門ノミネート、ゴールデングローブ賞では作品賞&主演女優賞を受賞した7/13(金)公開『レディ・バード』をご紹介します。

 舞台は2002年のカルフォルニア州サクラメント。片田舎の高校に通うクリスティンは都会の大学への進学を夢見ている女の子。地元の大学に通わせたい母親とはいつも喧嘩ばかり。そんな彼女が友達のこと、男の子のこと、家族のこと、そして自分の未来について悩み、前へ踏み出す様をユーモアたっぷりに瑞々しく描きます。

地方から都会へと移り住んで一人暮らしをしたことがある方、また実家暮らしで親に詮索される度、「ほっといて!」と思った経験がある方なら「これって私?」と共感度100%でもって受け入れてもらえるに違いないのが本作。

 主人公のクリスティンはまだ自分が何者でもないけれど、だからこそ、未来に希望を持っている女の子です。自分の生い立ちを嫌い(ともすれば呪い)、自分は本来こういう人間じゃない!という全く持って根拠のない考えが自身のエネルギー。現状に満足していない彼女の心情が自分のことを“レディ・バード”と呼ぶことを周りに強いている、というエピソードに表れていますがそれ自体、「恥ずかしい、イタイ!でもわからんでもない」と私は冒頭からクリスティンのことを抱きしめたくなりました。

だって私も若い頃は「今の私は本当の自分じゃない」なんてこと思ってましたもん(笑)自分がからっぽなだけなのに、それは棚上げして、「私はまだ本気を出してないだけ。しかもこんな田舎でそんな本気は出したくない」なんて思ってましたもん。その本気がどこかで発揮されたかは疑わしいですが、この心情、わかり過ぎる・・・。

 そんなレディ・バード、ついに羽ばたく機会を得ます。それは高校最後の1年。進学を機にこの街から脱出!憧れのニューヨークに行けるかも!刺激的な毎日が送れる、本当の自分になれる!と夢は膨らむのですが、そこにはお約束の母親の反対が・・・

母娘の関係性と言えば全世界共通でなかなかセンシティブ。大人になれば母の過剰な心配も愛情の裏返しだとわかるし、母親自身も自分のエゴを娘に押しつけ過ぎてはいけないし、一方で娘サイドも一人で勝手に育ったような気持ちになってはいけないし、と両者の考えはわかるもの、当事者になるとなかなかうまくいかず、折り合いも付けられない。この関係性は人類永遠の課題なのだと思います。でも衝突したり、いちいち気になってしまうことも結局は愛情あってこそ。学校のシスターがレディ・バードにそれに気付かせようとするあるセリフは真実の矢が私のハートにもブサブサっと突き刺さるのでした。

 この映画は『20センチュリー・ウーマン』、『犬ヶ島』ほかインデペンデント映画を中心に活躍中の女優、グレタ・ガーウィグの単独監督デビュー作。サクラメント生まれの彼女が自伝的エッセンスを盛り込み、脚本も手がけました。それは故郷への、そして昔の自分へのラブレター。そんなとてもパーソナルな物語の主人公を演じたのが若手No.1女優と言って過言ではないシアーシャ・ローナン。13歳で演じた『つぐない』でアカデミー賞助演女優賞にノミネート、その後『グランド・ブダペスト・ホテル』、『ブルックリン』と出演し、どんなジャンル、時代の映画でも輝きをはなつ彼女。行く行くはメリル・ストリープみたいな女優になると踏んでいます。

 そして、彼女の恋のお相手となる青年に『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のルーカス・ヘッジと『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメ、とシアーシャに劣らず今をときめく才能に溢れた二人の俳優がキャスティングされていることも忘れてはいけません。

 日本のティーン映画はキュンキュンものが主流ですが、現実ってこういう感じだと思うんです。自分がレディ・バードと同じような年の頃、この映画に出会えてたら・・・と思うのですが、あの頃から距離をおいてるからより胸にくる、ってことなのか??いや、でも戸惑いの渦中にいる若い方にも是非観ていただきたい1本です。

By.M