ウラシネマイクスピアリブログ

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『サンドラの小さな家』

 コロナ禍の影響で我らの生活にもいろいろな変化がある訳ですが、ステイホームを奨励されたことで起きた弊害の1つに家庭内でのDV増加があげられています。不安やストレスを抱えた者の矛先が弱き者にダイレクトに向かうというのは本当に許し難いことです。今回ご紹介する作品の主人公もDV被害者の女性。でも自らの手でそれに立ち向かう姿を力強く、温かい眼差しで描いていきます。4/2(金)公開『サンドラの小さな家』です。

 シングルマザーのサンドラ(クレア・ダン)は夫ガリー(イアン・ロイド・アンダーソン)の虐待から逃れ、二人の幼い娘たちとホテルで仮住まい生活を送っています。愛する娘との生活のために支援グループからのサポートを受けているもの、生活は苦しく公営住宅への入居も順番待ちで何年かかるかわからない。そんな中、娘との会話の中で自分で家を建てることを思いつきます。

 サンドラはインターネットを検索し、3万5千ユーロあれば家を建てられるという建築家のサイトを見つけます。とは言え、資金もない、家を建てるスキルなんてもちろんありません。公共的なサポートも充分ではなく、日々の生活をするのが精一杯なサンドラはハウスキーパーとパブでの仕事のかけもちで身体もボロボロ。DV夫からの度重なる暴力がトラウマになり、突然呼吸困難になることも・・・

 でもそんな時に彼女に手を差し伸べたのはサンドラの雇い主ペギー、土木建築業者のエイド、娘の友達のお母さんローザ、パブの同僚エイミー、その仲間たちという周囲の人々。彼らはサンドラが自分の力で何とかしようと立ち上がった時に、その姿を見て心を打たれ、いてもたってもいられなくなった人たちでした。でも彼らもサンドラより恵まれている境遇にいる人たちでは決してありません。それぞれに問題を抱えながらもそれでも困っているサンドラを見捨てることが出来なかった、それはアイルランドに古くからある“メハル”の精神が根底にあるから、と劇中で語られます。

それは“皆が集まって助け合い、結果自分も助けられる”ということ。頼られること、必要とされることで「あー、自分はここにいていいんだな」と思えることってありますもんね。一人で出来ないことも一人、また一人増えることで三人寄れば文殊の知恵的なことだって。

サンドラを助けた仲間のうちで唯一建築スキルを持っていたエイドは、ホームセンターで彼女がたまたま声をかけただけの男性でした。「この国では見返りもないのに行動する人はいない」と最初は突き離すけれど、見て見ぬふりを出来なかった彼がいの一番に見返りなしに何の縁もない彼女を助ける様には本当に心打たれます。

 そんなエイドの指導の元で、素人集団の仲間たちがまさに悪戦苦闘で家を完成させていく。でもDV夫ガリーは彼女に執着し、さらに妨害してくるのですが、サンドラは今や一人じゃない、彼女にはメハルの心で繋がった仲間たちという強い味方がいる!「負けないで!」と再びサンドラに、その仲間たちに心の中でエールを送っている自分がいました。

 この映画を観ると困った時には誰かを頼ってもいいんだな、ということを思わせてくれます。誰かに頼っていると「これ以上迷惑をかけられない・・・」って思いがちですもんね。今の日本、自己責任や自助だけを強く求められ、それが返ってギスギスとした空気を助長させている気もします。そんな時は“メハル”の精神を心の片隅に・・・ですね。

By.M