ウラシネマイクスピアリブログ

映画を愛するシネマイクスピアリの宣伝担当者が
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『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』

 年間を通して随一街が華やぐ季節ですが、空気を読まずにホラー映画をご紹介しますYO!だってこれむちゃくちゃ面白いんだもの、という訳で今回は12/22(金)公開『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』をお届けいたします。

 SNSで流行している“憑依”チャレンジ。呪物の“手”を握り「Talk to me」(話たまえ)、「I let you in」(あなたを受け入れる)と唱えると霊が憑依するというもの。但し90秒以内に手を離さなければ取り憑かれてしまう。若者たちはスリルと快感にのめり込みこのゲームを繰り返していくが・・・

 本作は双子のYouTuberフィリッポウ兄弟(31歳)の初監督作品。若き才能の登竜門サンダンス映画祭で注目を浴び、A24が全米の配給権を取得、結果日本でも大ヒットした『ミッドサマー』を上回る世界興収を上げているのが本作です。

最初は正直「YouTuberの映画かー」という偏見があったんです。でもその思いは見事に裏切られました!おもろい、そしてうまい、フィリッポウ兄弟なかなかやりよりよります!(偏見からの謎の上から目線ですみません)

 おそらく誰もが子供の時にこっくりさん的な遊びをしたと思うんです。若い時はきゃーきゃー言うのがとにかく楽しい。知らない世界は面白い。でもやっぱり“死”を遊びに結び付けて冒涜するとろくなことにはなりません。

 この映画の主人公ミアも最初は好奇心だったんです。でもただお遊びが過ぎて調子にのった若者って訳でもありませんでした。彼女は大好きだった母親を2年前に亡くしていて、その事実を受け入れられておらず、学校でも友だちがあまりいなくて居場所のなさ、孤独を感じている子です。そんな彼女が仲間と憑依チャレンジをしていたら親友の弟にミアの母を名乗る霊が取り憑いてしまうのです。

孤独の淵にいる少女が母親かもしれない霊とコンタクト出来ると知ったらどういう行動を取るのか、推して知るべし。邪悪な霊もそれにどんどんつけ込んでいきます。ミアは引き返すタイミングを与えられるのに、周囲も手を差し伸べるのに、好奇心と孤独から抜け出せずどんどんまさに闇落ちしていくのです・・・

 ダメとわかっていても仲間たちの手前、後に引けず悪乗りしてしまったり、一つのことに固執しすぎて周りが見えなくなったり、結果執着から抜け出せなくなったり、冷静に考えれば回避できる手だてがあるとわかってもハマってしまう人間の弱さは誰でも理解できるから、ミアのそうせざるを得ない選択に観ているこちらの気持ちもグっと入り込んでいきます。ミアの“繋がりたい”という願いが呪物の“手”を握ることで達成されるというその表現のシンプルさがうまいし、最終的に訪れるエンディングの秀逸さよ・・・

 入り口はゲームに悪乗りしたりSNSで注目されたいというティーンの生態を描いているように見えて、出口は誰かと繋がるという意味そのものを考えさせるという実は深いテーマを描くこの映画。全米の大ヒットを受け既にA24のもと、続編『Talk 2 Me』の制作が進行中!年末にきてなんとも天晴な映画の登場です!

By.M