ウラシネマイクスピアリブログ

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『ファンファーレ!ふたつの音』

 夕暮れを迎える時間が少しずつ早くなり、朝晩は一日ごとに秋を感じられるようになりました。こういう時期に観るとよりこの映画の良さが引き立つんじゃないかな、と思います。今回ご紹介するのは9/19(金)公開『ファンファーレ!ふたつの音』です。

 白血病と診断された世界的指揮者のティボ(バンジャマン・ラヴェルネ)。ドナー探しを通じて自分が養子であったこと、生き別れた弟・ジミー(ピエール・ロタン)がいることを知る。ジミーはかつて炭鉱で栄えた町の食堂で働きながら吹奏楽団での活動を楽しみに暮らしていた。育った環境も性格も全く異なる二人だったが、この出会いがお互いの人生を動かしていく・・・

 本作はフランスで260万人を動員し、フランス版アカデミー賞と言われるセザール賞主要7部門ノミネート、各国の映画祭で観客賞を始め数々の賞を受賞し、日本でも口コミがジワジワ効いてきているのを肌で感じております。

 全く違う人生を歩んできた者同士が出会い、自分たちになかったものを得て人生を豊かにしていく、しかも音楽を通して、と聞けばそれだけでもう「いい映画に決まってる」という安心感がありますがまさにそんな映画なので、自信をもってお届けしますよ。

 自分が白血病であると診断されたティボが向かったのは実の弟、ジミーの住む町でした。でも「実は僕たちは兄弟なんだ。ドナーになってほしい。」と言われてもジミーは戸惑います。そりゃそうだ、まさか自分に兄がいるなんて思ってないし、自分より良い生活を送り、ステイタスもあって恵まれた人生を送ってきたと一目瞭然でわかる男が調子よく自分の前に現れたから。実際、ティボの言動はどうしても鼻についちゃう。でも突然の出会いとは言え、彼が困っているのを目の前にし、ドナーになることを快諾します。そこから二人の人生は交錯していきます。

 そんな中でティボはジミーには彼が思う以上に音楽の才能があることを見抜き後押ししますが、年齢のこと、周囲の目線、置かれている環境、実際にうまくいってなかった自分の過去にどうしても足を引っ張られジミーはなかなか前に進めません。でもティボはまっすぐな心でジミーを応援することで彼の心はほぐれていくんです。またアマ、プロという違いはあったとは言え、音楽が彼らを結び、二人が触れ合っていく中で持つものが持たざるものに与えるという図式ではなく、互いのよきところを認め合って影響しあって変わっていくところが描かれ、それがとってもいい!

 またティボが指揮するオケの音楽は洗練されていてとっても素敵だけど、ジミーが所属する吹奏楽団は耳が遠い者、楽譜が読めない者、個性的な仲間たちだらけで軽い喧嘩もしょっちゅう。でも楽しんで音楽をやっている様子に、音楽が彼らの生活の一部になっている感じにほっこりしちゃいます。いつもはちょっと頼りない楽団の仲間たちですが、クライマックスに向かって起きるティボのさらなる人生の岐路にエールを送るべく、ジミーと共に立ち上がるエンディングは音楽が人に与えるパワーをダイレクトに、かつエモーショナルに表現していて、もう反則としか言いようがない。もうこんなの泣いちゃう!この映画は生きることの厳しさ、ままならなさを表現しながらも、それでも前に進もうというパワーも与えてくれますよ。

 しかし、人生ってほんと何が起きるかわからない。わからないからこそ、今を生きるしかないんですよね。だから自分でブレーキをかけるのは勿体ないし、そんな人がいたら「やっちゃいなよ!」と押してもいいのかも、と思ったり。軽率かしら!?

By.M