ウラシネマイクスピアリブログ

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『ザ・クリエイター/創造者』

 11/3(祝・金)になると“ゴジラシリーズ”の最新作『ゴジラ-1.0』が公開されますが、ハリウッド版『GODZILLAゴジラ』(2014)の監督として大抜擢され、その後『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』も手掛けた監督の最新作がこのほど公開されました。今回ご紹介するのはギャレス・エドワーズ監督が描く10/20(金)公開『ザ・クリエーター/創造者』です。

 舞台は進化を続けてきた人工知能(AI)が人類に反旗を翻し、人類とAIの熾烈な戦争が10年に渡って続いている近未来。元特殊部隊員ジョシュア(ジョン・デイヴィッド・ワシントン)は戦争と人類そのものを終わらせる力を持つ謎の兵器を開発した“クリエーター/創造主”を探しだし、殺すために雇われる。ところが彼がつきとめた超進化系AIの兵器はあどけない少女(マデリン・ユナ・ヴォイルズ)だった・・・

 実は観る前まで私、ナメてました・笑。人類を助けるために創造されたAIが核攻撃をしかけた近未来・・・なんて始まるからAIの脅威を描くいつものやつか~、と思った訳ですよ。でも観終わって思わず映画会社の人に言ってしまいました「予告編より全然面白い!」と。

 いつものやつとちょっと違ったのは人類が全てAIを敵視しているのではなく、AIを撲滅しようとしているアメリカを中心とした西側諸国と人類とAIが共存しているニューアジアと呼ばれる2つの勢力があり、これらが戦闘状態にあること。クリエーターが作った最終兵器を無効化すべく、ニューアジアに潜入したジョシュアですが、そこで繰り広げられていたのは米軍サイドの凄惨なニューアジアへの攻撃だったんです。

 米軍は空から破壊攻撃をする“ノマド”という軍事ステーションを駆使してAIを一網打尽に攻撃していくのですが(この描写が恐怖・・・)、ニューアジアではAIと人類は共存しているのでそこで殺されるのはAIだけでなく罪のない人々もなんです。「AIをかくまってるだろう」と村人たちに容赦ない暴力を振るう兵士の姿を見ていると「そうだよ、人間の方がよっぽど心ないよ」と思ってしまう。ここらあたりの描写はベトナム戦争のメタファーとして撮られているのも一目瞭然で鬱々たる気持ちになってしまいます。

 そんな中でジョシュアはニューアジアの人々と行動を共にし、また最終兵器であるアルフィーと名付けたそのAI少女の創造された真の目的が明かされていく過程で心境に変化が表れてくると、この映画がなんとエモーショナルなストーリーへと変わっていくのです。大切な誰かを守るために、また守らねばならないもののためにジョシュアが取る行動がエモい、エモ過ぎる・・・「そうだったこの映画の監督・脚本は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のコンビだった。そりゃあ、エモいわ」と大いに納得したのです。

日本、ひいてはアジア大好きギャレス監督がそのヲタク心を爆発させた世界観、そして『GODZILLAゴジラ』に続きキャスティングされたケン・ワナナベの存在感がここでも光ります。何より何度も言いますが、エモい!エモ過ぎる!私、エモいSF(『ブレードランナー』、『ガタカ』など)が大好物なんですよ・・・

 色々不景気な昨今、ハリウッドですらリスクが高いオリジナル(脚本)ものって作り辛いご時世ですが、やっぱりオリジナルっていい!と思わせてくれた映画でもあるのでぜひお見逃しなくーー。

By.M