ウラシネマイクスピアリブログ

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『エルヴィス』

 「世界で最も売れたソロアーティスト(ギネス認定)」「一日で売り上げたレコードの枚数2000万枚(世界記録)」「レコード総売り上げ30億枚(推定)」と数多くの伝説を残したスーパースターの映画が公開されました。彼の名前はエルヴィス・プレスリー。今回ご紹介するのは7/1(金)公開『エルヴィス』です。

 人気絶頂の42歳にしてこの世を去ったエルヴィス(オースティン・バトラー)。“キング・オブ・ロックンロール”の称号を持つ彼は、若者に支持された一方、大人社会からは反感を買い警察の監視下に置かれることも・・・。そんなエルヴィスの人生を彼のマネージャーだったトム・パーカー大佐(トム・ハンクス)との関係性と共に描くのが本作です。

 先ず言えることはエルヴィスのことを知っている、知らないと言った、事前知識の深さに関わらず楽しめるのがこの映画の良いところ。彼がどんな形で音楽に目覚め、スターの階段を駆け上り、挫折し、復活してなお結果、若くしてこの世を去ることとなるのか、その歩みが圧倒的な熱量でもって描かれ、バズ・ラーマン監督版“エルヴィス”に夢中になってしまうから。

 エルヴィスは官能的なパフォーマンスのせいで保守的な大人たちの反感を買うのですが、そもそも人種隔離政策が色濃く残っていたあの時代にエルヴィスの歌った音楽がブラックミュージックをルーツにしたものだったからというのもあります。貧しさゆえ、黒人居住区域の白人専用住宅に住み、教会にも熱心に通う少年時代、(黒人たちの音楽である)ブルースやゴスペルを聴いて育った彼の体に沁みつくリズム、歌い方は当時の白人の大人たちの逆鱗に触れるものだったのです。でもそのルーツがあったからこそエルヴィスは自身の代名詞的な音楽や歌い方、パフォーマンスを獲得していく訳ですが、それを演じるオースティン・バトラーがまた魅力的過ぎる件!

2年を費やした役作りでもってエルヴィスを演じ切った彼のほとばしるパッションが尋常じゃない。過剰な程にナイーブでありながらも一度舞台に立ち歌うと若者たちを熱狂させてしまう、オースティン演じるエルヴィスの佇まいとパフォーマンスに私、度肝抜かれました。そしてエルヴィス自身がスターダムにのし上がっていく様が描かれる時、同時にオースティン・バトラーという1人の役者がこの役でもって特別な存在になる予感もバシバシ感じるからダブルでなんかときめいちゃうんですよね。

 エルヴィスは恵まれたルックスと才能、特異な環境でもって得たスキルでもってスターになるのですが、この映画ではその才能にいち早く目をつけ彼のマネージャーとなったトム・パーカー大佐の存在、その視点にも赴きがおかれます。音楽業界には全く素人だった彼ですが(移動遊園地や見世物小屋の)興行主だった彼は山師のような勘でもってエルヴィスをどんどんスターにしていきます。そのやり方は胡散臭く、えげつなく、彼はまるで悪魔のような存在だけれどその力技でもってエルヴィスの才能が引き出された一面があるのも事実。

でもパーカーにとってエルヴィスは一貫して“見世物”としての対象物で金儲けの道具でしかなかった・・・という描かれ方は何とも言えない後味で、そのためにパーカーがエルヴィスに強いていたことを考えるとやるせない思いが駆け巡ります。おまけにパーカーを善人の代表トム・ハンクスがもう厭らしさ全開で演じるから憎さ100倍ってもんです。

 本作は約2時間40分の長めの作品ではありますが、実は4時間バージョンも存在しているそうで。それを聞くと「公開しないかな~」と思ってしまうのは私だけではないハズ!!
だってオースティン演じるエルヴィスのパフォーマンスがほんと抜群なんだものーーー。

By.M