ウラシネマイクスピアリブログ

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『ほんとうのピノッキオ』

 “ピノッキオ”と言えばディズニーのアニメーションで広く愛されているキャラクターの1つですね。今回ご紹介するのは11/5(金)公開『ほんとうのピノッキオ』です。

 貧しい木工職人のジェペット爺さん(ロベルト・ベニーニ)、生命力溢れる1本の丸太で丹精込めて作った人形はまるで人間の子供のように命を宿します。ピノッキオ(フェデリコ・エラピ)と名付けられたその人形、ジェペット爺さんは子供が出来たと大喜びなのにすぐに彼の元を飛びだしてしまいます。そこから行く先々でトラブルに巻き込まれるピノッキオの冒険が始まります。

 “ピノッキオ”は1883年に出版されたイタリアの作家カルロ・コッローディの書いた児童文学「ピノッキオの冒険」が誕生のきっかけでディズニー版はその原作を下敷きに作られました。今では“ピノッキオ”のイメージは世界中、ディズニー版で知られていますが本家はちょっと違ったんです・・というのがこの映画が描くところ。

 ピノッキオはとにかくやんちゃな少年、ジェペットの言うことなんて全然聞きません。貧しい暮らしをするジェペットが彼を学校に行かせようとやっとの思いで手に入れた教科書だって、近所にやってきた旅周りの人形劇が観たくて売り払ってしまう始末。そこから一座の親方に連れされるわ、燃やされそうになるわで最初からイバラ道。まぁそれも最初っから素直に学校に行っていればこんなことにはならなかったのですが、好奇心旺盛なピノッキオは万事こんな調子でこの後も「あー、そっちダメだって~」という展開もことごとくダメな方に向かってしまいます。

しかも世間知らずのピノッキオなので、ペテン師のネコとキツネに騙されたり、あらぬ疑いをかけられたりすることも・・・道中でのおしゃべりコオロギの忠告も心優しい妖精の言いつけにも一切耳をかさず、大概その後トラブルに見舞われるので「ディズニー版と全然違うーー」というのは一目瞭然です。

 でもそんな風に壁にぶち当たったり、悪い大人に騙されたりと理不尽な目に遭っても彼は挫けません。元来の好奇心旺盛なマインドを活かして友達を作ったり、誰かの手助けをしたり、「もうダメだ・・・」と諦める人を励ましたりと一歩一歩成長を重ねます。そう、ピノッキオが辿る冒険を通して子供は経験から学び、知恵や強さも得る、というメッセージを伝えようとしている気がします。

子供に危険な目に遭わせたくない、なるだけ穏便に平和に・・・というのは親心でしょうが時にいろいろな意味で怪我することも必要でそこから逞しくなる、それすなわち成長!という側面もありますもんね。

 そんな山あり谷ありのピノッキオの大冒険ですが、独特の世界観で作り上げられた映像表現がとにかく素晴らしいんです。CGに頼り過ぎないビジュアルを目指し、ピノッキオを演じたフェデリコくんは毎日撮影前に4時間かけて特殊メイクをほどこしていたので、人形役だけど人間の魂を感じられるし、摩訶不思議なキャラクターたちもとっても魅力的で、アカデミー賞衣装デザイン賞、メイクアップ&へスタイリング賞ノミネート、というのも納得です。

 ユーモアの中に人生の不条理や社会風刺も描いた本作を観ればきっと“ピノッキオ”の世界がもっともっと好きになると思いますYO!

By.M