ウラシネマイクスピアリブログ

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<松竹ブロードウェイシネマ>『キンキーブーツ』

 緊急事態宣言の発出で都内の映画館の多くが休業、劇場の公演も延期・中止、はたまた無観客ライブ配信への変更となっています。こういう状況なので致し方なしですね・・・。とは言えこの1年やる方も観る方も制約の中で出来得る限りのことをやっていただけに何ともやるせない気持ちになってしまいます。そんな中、本家本元のミュージカルをスクリーンで楽しんでみませんか?今回は4/29(木・祝)公開の松竹ブロードウェイシネマ『キンキーブーツ』をご紹介いたします。

 舞台はイギリスの田舎町。老舗靴工場「プライス&サン」の4代目として生まれたチャーリー(キリアン・ドネリー)は父親が急死したことで工場を継ぐことに。でも工場は破たん寸前!このままだと従業員を解雇しなくてはならない・・・そんな時にチャーリーはドラァグクイーンのローラ(マット・ヘンリー)と出会い、彼女たちの悩みをヒントにドラァグクイーンのためのセクシーで魅惑的な“キンキーブーツ”を作ることを思いつきます。

 『キンキーブーツ』は元々イギリスで実際にあった話をモチーフに映画化、日本でも2006年に公開されました。その後、2013年にブロードウェイでミュージカル化、その年のトニー賞で最多13部門のノミネート、最優秀作品賞他6部門を受賞、2015年に“キンキーブーツ”を生み出したロンドンでも上演され大成功を治めます。(今回ご覧いただくのはロンドン版)2016、2019年には小池徹平、三浦春馬のW主演による日本版が大絶賛されたことでこの舞台をご存知な方も多いと思います。数々の賞を受賞し、国を越え愛されている演目なだけあって作品自体の完成度の高さ、面白さは言うまでもありません。

 本作の魅力は数えきれないほどあるけれど、やっぱり一番はローラ!登場シーンからそのカリスマ性で観客のハートを鷲掴み!ローラがバックダンサーの“エンジェル”たちを従えて踊るシーンは冒頭からスタンディングしたくなること間違いなし。高いヒールでしなやかにかつ大胆に踊る姿に「よくあんなヒールで踊れる・・・」と思ってしまう女性も多いと思います。作品の中でも体重を支えきれずにヒールはすぐダメになっちゃう・・・ということからチャーリーはドラァグクィーンのためのブーツを作ることになるのですが。

 そしてどこか心もとないチャーリーと自信に溢れるローラは性格も違えば接点もなさそうに見えたのですが二人は似た者同士だった、ということが次第とわかっていきます。二人とも父親が望むような自分になれなかったことへの躓きを子供の頃からずっと心に抱えて生きてきた・・・。それでもローラは常に自分らしさ、ありたい自分を追い求め生きていたことで自分の居場所を見つけていました。そんなローラの姿を見てチャーリーの中の何かが少しずつ変化していくのでした。
と同時に最初はローラに偏見を持っていた「プライス&サン」の同僚たちも受け入れることを知っていきます。それは他人を受け入れるには先ず自分を受け入れなければ始まらない・・・ということも。

 冒頭触れたように、生のエンターテイメントを楽しめない今だからこそ、より観た人の心を鼓舞し、HAPPYにしてくれるのが本作です。エネルギッシュでパワフルで時に繊細、そんな極上の舞台を(スクリーンを通して)全身で浴びて、鬱々としている毎日のこともスカーンと忘れていただければ・・・、と。今の状況に関しては嘆くことばかりですが、(手前味噌ではありますが)この作品をこのタイミングでお届け出来ることはとても嬉しいんです。

観終わった後は感化されていつもより胸を張り、ちょっと軽快な足取りで劇場を後にしている自分がいると思いますYO!

By.M