ウラシネマイクスピアリブログ

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『記憶にございません!』

 TVをつければ世界中の政治家の皆さんが何やら話題を提供していて、日本も何だかなぁ、な状況ではありますが今回は政界を舞台に繰り広げられるコメディ映画、9/13(金)公開『記憶にございません!』をご紹介いたします。

 史上最低の支持率2.3%を叩き出した時の総理大臣・黒田啓介(中井貴一)はある日、一般市民が投げた石が頭に命中し、記憶喪失になってしまいます。金と権力に目がない悪徳政治家だった黒田はその日から一気に善良な普通のおじさんに!?総理として公務を続行する黒田ですが果たしてこのピンチを乗り越えることは出来るのか?そして黒田の記憶は戻るのか??

 本作の監督・脚本は『ギャラクシー街道』以来、4年ぶりにメガホンをとる三谷幸喜。という訳で三谷映画・舞台・ドラマに欠かせない豪華キャストが今回も勢揃いです。何と言っても総理大臣・黒田を演じる中井貴一の存在感が光ります。シリアスからコメディまで幅広い役をこなす中井さん。

本作でも映画の冒頭は「うるせーなー、だから記憶にねぇんだっ」とべらんめぇ調でかなり感じが悪いのですが、頭に石をぶつけられてからは気弱になったり、突如夢や理想を語り出す何とも良い人に一転。総理大臣である記憶が一切なくなっているのでいろんな難題がホイホイ彼を襲い、どこかトホホな状況に追い込まれる感じも中井さんが演じるからより同情しちゃうと申しましょうか。

そう言えば、中井さんのお父さん・佐田啓二も二枚目スターでありながらも悪い男、頼りない男、
どこかホツレ感がある役を演じる時の方が魅力的だったなぁ、やっぱ親子だなぁ、と思ったり・・・。
(個人的には京マチ子主演:『甘い汁』のダメな佐田啓二とかオススメです)

 と言う訳で本作は政局にメスを入れる!とか痛烈な政府批判も辞さないといったバリバリな社会派映画ではなく、あくまでもドタバタなシチュエーションコメディ。そして権力を持ったが故に私利私欲にまみれまくり、強欲なままに生きてきた男が記憶を失い、ゼロになったことで人生をリセットしていく物語でもあるのです。

 無欲になって、しがらみもなくなり、思いやりに溢れてしまった黒田総理は、記憶喪失であることをひた隠しにして公務活動を続けます。でもそれを敵対する派閥議員に知られる訳にはいかないし、バレたらそもそも即辞職は免れません。そんな中で彼を助けるのが首相秘書官・井坂(ディーン・フジオカ)と事務秘書官・番場(小池栄子)。

特に三谷作品初参戦、井坂を演じるおディーンことディーン・フジオカがいい!人数多め、キャラ濃い目の群像劇、加えてコメディなのでどうしても全体がバタバタしそうになるのですが、その都度クールな面持ちでおディーン登場。彼だけは始終演技の温度が変わらないので、彼のおかげで劇中のバランスが保たれている気がします。

主演を演じることも多いおディーンですが、持ち前の落ち着きヴォイスでもって脇でピリリっと存在する役もお似合いですね。そんなおディーン、いや井坂も極悪総理・黒田の元でたくさんのものを見失っていたのですが、このハプニングを機に彼の中の何かも変わろうとしていのでした・・・。

 この映画はたまさか舞台が政界ではありますが、描くテーマは誰でも"はっ"と思わされること。年を取ったり、同じ事を続けていると"あの時のまっさらな気持ち"を遠くに置っぽってしまいがちですが
いつでもリセットすることは出来るし、気付いた時がそれをやる時、なので皆さんもこの映画を観て脳内リセットは如何でしょう?

By.M