ウラシネマイクスピアリブログ

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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

 日本における人気のハリウッドスターは未だベテラン勢が熱い!いい加減、若手の登場を期待したい所ですが、と言っても彼らを越える存在がなかなか出てこないのも事実。そんな中、この二大スターの共演が楽しみ!という方も多いんじゃないでしょうか?しかも監督はクエンティン・タランティーノ。今回ご紹介する作品はレオナルド・ディカプリオ×ブラッド・ピット初共演、8/30(金)公開『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』です。

 ディカプリオ(以下ディカプ)演じるは落ち目の俳優リック・ダルトン。彼の専属スタントマン兼付き人のクリフ・ブースをブラッド・ピット(以下ブラピ)が演じます。この映画ではリックとクリフの熱い友情をベースにめまぐるしく変わろうとしていた1969年のハリウッドそのものも描いていきます。

 本作はタランティーノ映画が大好物だよ、という方はいつものようにまっさらな気持ちで映画館にGO!していただきつつ、「映画のこといろいろ詳しくないと面白くないんでしょう?」とタランティーノ印があるとかえって尻込みしちゃう方にも是非観てほしい!だってディカプとブラピの共演ってだけでずっとスクリーンを観ていたい、と思わせてくれるから。

実は観る前は「この二人、食い合わせが悪かったりしないかな」って正直思っていたんです。ピンで充分主役を張れるスター同士が一つの画面に収まるのって意外と不協和音が立ちやすいというか・・・でもそんな心配は全くなく、むしろ「何でこれまで共演してなかったの!」とその相性の良さにたまげた!

 劇中、二人はバディ(相棒)という関係性。ディカプ扮するリックはスター。でも最近はめっきりいい仕事もなく情緒不安定。一方、ブラピ扮するクリフはリックの専属スタントマンをしながら、彼の面倒をみたり相談にものっている。まさに頼れる男、リックの心の支えなのです。ディカプと言えば眉間にシワを寄せて神経ギリギリの演技をしているイメージもありますが、本作では「うまく演技出来ないよー、なんで俺あんな演技しちゃったんだ!」とメソメソ泣いたりして、笑わせつつ母性本能をくすぐられる役。それをマルっと受け止めるブラピは始終クールで頼もしいったりゃありゃしない。

しかも今年55歳とは思えない肉体美を文脈全く関係なく披露てくれたりと、とにかくカッコイイ!私にとってブラピは男前すぎてその良さがわからなかったのですが、本作におけるブラピは最初から最後まで徹底的にかっちょいい。“かっこいい”という概念としてのブラピの魅力を今さら知りました。いや、マジでこの映画のブラピはやばいです。

 あとはこの映画で描かれる実際に起きたある事件の背景だけ知っておけば全く問題なし!劇中、重要な鍵となるのが実際起きた“シャロン・テート殺人事件”。『ローズマリーの赤ちゃん』、『戦場のピアニスト』などのロマン・ポランスキー監督の妻で女優のシャロン・テートが自宅で友人4人と共に惨殺。

犯人は当時ベトナム戦争の反戦運動としてヒッピー文化が全盛期だった時期に実在したカルト集団の信者たち。しかも本来のターゲットはシャロンではなく別の人物、その身代りとして殺害されました。この事件の背景には劇中で描かれる1969年代の空気感、世相が影響していて、ディカプ×ブラピの日常と並行して、その時代性が時に不穏に緊張感を持って描かれます。劇中でシャロン・テートを演じるマーゴット・ロビーが無垢な存在そのものとして輝いているので物語が進むにつれ余計に嫌~な予感が我々観客の緊張感を助長させるのです。

 でもこれはタランティーノの映画です。映画を愛し、映画と共に生き、1969年を生きたタランティーノがこの映画でやってくれます。いつものタランティーノっぽさがありながらのちょっとおセンチでマジカルな本作。タラちゃん自身、“ハリウッドへのラブレター”と語る1本、是非スクリーンでご覧くださーい。そしてディカプ×ブラピのバディ感もさることながら、ブラピ×お犬様のコンビネーションも注目!

By.M