ウラシネマイクスピアリブログ

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『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』

 こんにちは、女住人Mです。前回お伝えした通り、2週に渡ってホラー映画の傑作を・・・と言っても本作、実はホラーの皮を被った感涙ジュブナイル映画、11/3(金)公開の『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』をご紹介します。

 静かな田舎町で起きる相次ぐ子供の失踪事件。少年ビルの弟も大雨の日に消息を絶ちます。行方不明の弟を案じ、悲嘆にくれる彼の前に突如ピエロの姿をした“それ”が出現!ビルとその秘密を共有することになった仲間たちの前にも現れる“それ”はさらなる恐怖を彼らに与えていきます

本作はベストセラー作家スティーヴン・キングの代表作の1つ、発刊以来長年に渡り世界中の読者に強烈なトラウマを植え付けてきた小説の映画化です。子供の頃は怖い話を聴いたり、「あなたの知らない世界」的な怪奇特集番組を見てトイレに行けない!となったり、暗がりでなんてことないものがお化けに見える、といった経験ありますよね?本作における“恐怖”はまさに、自分にとっての得体の知れないものへの不安が核にあり、それがどんどん膨らんでいって、さらなる恐怖を生み出す様を描きます。この手の映画は大人が観ると単純に「ワー、キャー!」と楽しめるけれど、子供が観たら確実にトラウマレベルです。

 本作は全米で9月に公開され「エクソシスト」(1973年)が持っていた記録を破りホラー映画史上No.1大大大ヒットとなりました。前回、上半期を代表する作品として『ゲット・アウト』を挙げましたが、下半期を代表する作品は間違いなく本作でしょう。

アメリカではパーティーなどで子供たちを楽しませるためにピエロが登場しますが、その風貌がかえって子供たちのトラウマになり“ピエロ恐怖症”になる人がいるそうで、昨今では殺人鬼ピエロが都市伝説化して、それを逆手にとったイタズラまで発生。その取り締まりのため警察が乗り出すぐらいだそうで。大大大ヒットの要因は“ピエロ”が恐怖のアイコンとして確立している、そんな背景もあったかもしれません。

でも大大大ヒットしているのはこの映画がホラー映画として純粋に面白いからだけでなく、むしろ冒頭でお伝えした通り、ホラー映画の皮を被りながらもその実、少年少女たちの成長物語を描いた映画として傑作だからなんだと思います。

 ビルを始め、その仲間たちはそれぞれが内気で吃音症だったり、太っていたり、よそ者なことでイジメられていたり、親に暴力を振られていたりと悩みを抱えています。そんな彼らがビルの弟を見つけ出すために交流を深め、結束し、突如出現する“それ”に立ち向かうことになります。でも“それ”はいつも彼らが抱えている“恐怖”に姿を変えて現れる。

つまり彼らは自分たちが最も避けたい、でも克服しなければならないものに対峙することを求められるんです。「怖い、逃げたい、でもこれから逃げているだけでは自分(たち)は今後も負け続けるだけなんだ!」。“それ”に負けまいと、力を振り絞り、時に協力し合い、真っ向勝負をかける彼らにいつしか観客は胸が熱くなるハズ!

 思えば、スティーヴン・キング原作ものはいくつか映画化されていて、その代表作の筆頭に『スタンド・バイ・ミー』があります。本作はホラー映画でありながら『スタンド・バイ・ミー』的であり、はたまた(リチャード・ドナー監督の)『グーニーズ』的でもあり、今後も語り継がれるジュブナイル映画の傑作として必見なのです。ビルとその仲間たちが愛おしくてたまらない、まさかの感動作なのでホラー映画が苦手な人にこそ観てほしい・・・。続編の製作も決定ですYO!

By.M