ウラシネマイクスピアリブログ

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『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』

 ワクチン接種が進み、日常が回復傾向にあるアメリカ。この作品の大ヒットスタートからもその様子が伺えます。今回は既に全米では興行収入1億ドルを突破、6/18(金)公開『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』をご紹介いたします。

 本作は音に反応して人を襲う“何か”によって荒廃してしまった世界を舞台に、過酷な状況をサバイブするアボット一家の姿を描き大ヒットした『クワイエット・プレイス』の続編です。前作で父親と住む家を失った一家が産まれたばかりの赤ん坊を連れ、新たな避難場所を求め外の世界に出ていくことになります。

 1作目では既に終末的世界になっていた、という状況でスタートしていましたが本作の冒頭ではその謎の“何か”がやって来た一日目が描かれ、前作を未見だったとしても映画の設定が理解出来る超早わかりシークエンスからスタートします。

謎の“何か”は 鋭敏な聴覚を持ち、ささいな音にも反応しその音をめがけて人間を襲い殺してしまう。そのため、音を立てないことが防御策。登場人物たちが音を立てないよう見守ることとなる我々観客はアボット一家が強いられる緊張感を疑似体験することになります。そして映画館は迫力ある音響を楽しむことが出来ると共に、遮音性に優れているため“無音”をより体感出来る空間でもあります。なのでアボット一家とのシンクロ率もさらに上昇!という訳です。

 本作が大ヒットしている所以は“音を出してはいけない”という大前提が映画館でこの映画を体感するにふさわしルールだったことですが、それ以上に1作目からアボット家に降りかかる出来事を通して描かれるドラマがしっかりとしているところにあります。

アボット家は母エヴリン(エミリー・ブラント)、聴覚に障害を持つ長女リーガン(ミリセント・シモンズ)、とにかく怖がりな長男マーカス(ノア・ジュプ)、そして生まれたばかりの赤ん坊と今は4人。前作では父親から深い愛情を受けながらもその愛さえ疑い苦しんでいたリーガンが父親と共に“何か”と立ち向かう過程で父の真意を理解し、彼女自身が大きく成長する様を描いていました。そんな父娘のやり取りに涙した人も多かったと思います。

前作のラストで“何か”の弱点を父親と共に発見したリーガン、本作ではその弱点を突く方法を利用しこの世界を生きのびるんだ!何なら世界も救うんだ!とさらに成長していて本当に頼もしい限りです。大切な父親を亡くしたという心の傷を抱えながらも使命感に燃える彼女が物語をグイグイひっぱっていきます。

 本作では前作以上にリーガンとマーカスという子供たちの活躍がフォーカスされた作品になった訳ですがそれは単純に子供たちが未知なる“何か”と闘う姿を描いただけでなく、“何か”は“世界”を意味するメタファーとも取れます。

最初(前作)は“家族”という小さな共同体の中で成長していた子供たちも次第に(本作で)もっと大きな“世界”があることを知ります。世界は時に“何か”のように、無差別に暴力的に人を傷つけます。だから人は家族や社会から、経験で学ぶことでこの世界の中で生きていく術を身につけていきます。また親はいつまでも自分を守ってくれる訳ではないし、その存在も永遠ではない、ある時点で立場が逆転し子供が親を守る存在へと変化していきます。そんな親子の関係性や人の成長といった過程がドラマのベースにある作品なので観た人の満足度も高いのかもしれません。

 奇しくもパンデミックの世界を生きている今、映画の世界観との共通点を感じてしまった私は「我々も乗り越えてみせるぞ!」と気持ちを高ぶらせて劇場を後にしたのでした・・・


PS, 謎の生存者を演じるのは謎キャラが十八番のキリアン・マーフィ!はい、注目!!

By.M