ウラシネマイクスピアリブログ

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『21ブリッジ』

 2020年8月、人気絶頂の中、癌のために逝去したチャドウィック・ボーズマン。ブラック・パンサーを演じたことでその存在を知った方も多いと思います。そんな彼が『アベンジャーズ』シリーズのルッソ兄弟と共にプロデューサーとして名前を連ねた入魂の1本、4/9(金)公開『21ブリッジ』をご紹介いたします。

 真夜中のマンハッタン、突如発生した銃撃事件。犯人のレイモンド(テイラー・キッチュ)とマイケル(ステファン・ジェイムズ)は小金欲しさ程度の気持ちでコカインを盗むために店を襲撃。でもそこには想定外の量のコカインが保管されていた上に運悪く巡回途中と思しき警官の集団がやってきたため、犯人たちと警官たちとの激しい銃撃戦になってしまいます。7人の警察官が殺害され、さらに1人が瀕死の重傷・・・

 捜査に乗り出すのは殉職した偉大なる父の影を追いながら警官となったアンドレイ(チャドウィック・ボーズマン)。父の影響でとにかく正義感が強い。麻薬取締班のバーンズ刑事(シェナ・ミラー)と共に捜査に乗り出したアンドレイは犯人が高飛びをする前にマンハッタン島にかかる12の橋を封鎖し、一網打尽にする策を思いつくのです。ただならぬ緊迫感にこの手の映画が好きな方はニヤリと微笑むに違いない導入です。

 NYに馴染みのない方でも「レインボーブリッジを封鎖せよ」なワードが沁みついている日本人にとって“橋封鎖”と聞くだけで胸がザワザワする人も多いのか!?でもこの映画がいいのは“橋を封鎖しちゃうよ”というのはあくまでも一つのフックでしかなく、実はそもそも冒頭から散りばめられていた「あれ?おかしくない」という引っかかりがどんどん物語の求心力を高めていくところなんです。

 そして事件を何としても明朝までに解決せねばというタイムリミットもあることでハラハラドキドキ感が増していくわ、正義感が人一倍強いアンドレイもただの熱血漢というキャラクターではなく、あくまでも冷静沈着で洞察力も鋭く、故にある核心に近づいていく・・・という展開にも説得力があるんです。

しかも追う者だけに物語がフォーカスされるのではなく、犯人二人の視点も同時に描かれるので緊迫感は増し、追いつ追われつの両者が奇しくもある一点に辿りつくところなんぞ、いい展開です。余談ですが、犯人の1人、レイモンドを演じるのはテイラー・キッチュ。ウォルト・ディズニー生誕110周年記念作品『ジョン・カーター』やユニバーサル映画100周年記念作品『バトルシップ』(名作!)で華々しく表舞台に登場したのですが、残念ながら作品自体は奮わず・・・役者として短命に終わるのか、と思われつつもいわくつきの主人公や脇にいるとピリリと光る役者へと成長を遂げているので、そんな彼が今回のようにピッタリの役をやっていると嬉しくなっちゃいます。

 と、まさかのテイラー・キッチュ推しになりましたが、最終的にはやっぱりチャドウィックがいたからこそよりこの映画が見応えある深みのある作品になったというのは言うまでもありません。カリスマ性ありつつ、人間味溢れるキャラクターを演じたチャドウィック・ボーズマン、彼の新作が観られないのは残念でなりませんが、スクリーンの中では永遠です!


By.M