ウラシネマイクスピアリブログ

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『ゴッホ 最期の手紙』ほか

 ちょっと前までお正月だったのに、すっかり通常運転ですね。こんにちは女住人Mです。年明けからシネマイクスピアリでは単館映画の良作をイッキに取りそろえてお届け中なので今回はそれらのいくつかをまとめてご紹介します。

 先ずは『ゴッホ 最期の手紙』(1/13公開)です。説明不要なゴッホの作品ですが、37歳という若さで“自殺”したという彼の死に関しては謎が多いとされています。本作ではゴッホが弟テオに宛てた手紙を(彼が描いた絵のモデルとしても知られる)郵便配達人ジョイゼフ・ルーラン、その息子アルマンが届けようとする過程で明るみになっていくゴッホの晩年が語られていきます。

そしてこの映画は俳優が演じた実写映像を元に125名の画家たちがゴッホのタッチを再現し油絵を描き、それをアニメーション化するという特殊な技法を使い表現され、名画に新たな命が吹き込まれました。でも本作が心に残る1本となっているのは“名画が動く”というインパクトある美しい映像表現という点にのみある訳ではなく、それによって語られるゴッホの数奇な人生そのものにある、と思っています。

精神を病んで自身の片耳を切り取ってしまったこと、生前は1枚しか絵が売れなかったこと、周囲の交流のあった人をたくさん描いていたことなど、うっすらとでしか知らなかったゴッホ像がこの映画を観るとより理解出来るようになるのです。なのでこの映画を観た後だとこれまで以上に彼の作品を楽しめるようになること間違いなし!普段から絵画鑑賞がお好きな方、ミステリータッチの小説や映画がお好きな方に特にオススメな1本です。

 続きましてはフィンランドを代表する監督にして日本でもファンの多いアキ・カウリスマキ監督最新作にして去年のベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞した『希望のかなた』(1/13公開)です。内戦が激化する故郷シリアを逃れた青年カーリドの願いは“いい人々のいい国”と聞いたことがあるフィンランドで生き別れた妹を見つけ一緒に暮らすこと。でも難民申請は却下された上に街中で理不尽な目に・・・。そんな彼に救いの手を差し伸べたのはレストランオーナーのヴィクストロム。彼も自分の人生をやり直そうとしていたのでした・・・

とあらすじだけ読むと社会派でヘビーな映画と思われるかもしれませんが、むしろ真逆で時にトボケていて、かつほんわりとした作品で、それはカウリスマキ印とも言えます。今や世界中の課題でもある難民問題に直面しているカーリドたちの現実が物語のベースとしては描かれますが、カウリスマキ映画の登場人物たちはいつも社会の片隅でつつましやかにまじめに生きている普通の人々。

そんな人たちのちょっとした優しさや思いやりが次第と希望への道しるべとなるのです。映画を通して無条件の愛情、心温まる善意にふれ、人として大事にしなければいけないことをシミジミと思い出させてくれる・・・。カウリスマキ映画は一度ハマると他の作品もきっと気に入っていただけると思います。(アキ・カウリスマキ、これも口に出して言いたい監督の名前の1つですね)

 さて最後にご紹介するのはストップモーション・アニメ世界最高峰の技術を持つスタジオライカの最新作『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(1/13公開)です。三味線の音色でもって折り紙を操る不思議な力を持つ少年クボ。闇の魔力によって両親を亡くした彼はそれに打ち勝つために三種の神器を探す旅に出かけます。古き日本を舞台にした物語ということで“海外の人が思い描く間違った日本描写”を想像して敬遠する方がいるやもですが、それは大きな間違いです。まるで“まんが日本昔話を彷彿するかのような活劇絵巻”と称しましょうか、日本文化に敬意溢れる素晴らしい作品です。

ストップアニメーションなので1週間かけてやっと3秒ぐらいの映像が出来るという気が遠くなるような制作過程を経て完成しているので、クリエイターたちの努力、忍耐、深い愛情がヒシヒシと伝わってくるのは勿論ですが、その技法のみならず、何と言ってもストーリーが抜群なところがポイント!クボ少年の冒険ファンタジーが描かれることと並行して、物語を語ること、語り継ぐことの意味まで描かれていて、最後は感動号泣必至!「まばたきすらしてはならぬ!」と冒頭、クボ少年が語りますが、まさに“まばたきすることさえ勿体ない”と感じるこれまたオススメの1本なのです。そしてシネマイクスピアリでは本作の公開を記念してクボ人形展やスタジオライカの旧作上映も開催中、そちらも併せてお楽しみ下さい!

By.M
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  • ※『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』公開記念、クボ人形の展示と旧作上映に関してはこちら